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K-19評論(12)
ソ連初の弾道ミサイルを装備した原子力潜水艦K19の原子炉事故の史実に基づいている。
原潜の原子炉事故はソ連だけでも10件以上、原子炉以外の火災などが原因だが5隻の原潜が海洋に沈んでいる(アメリカは2隻)。1989年にノルウェー沖海底1685mに沈んだK-278からは今でも800ベクレル/ℓ(通常の海水の80万倍)の放射能が検出されているという。ソ連崩壊後いったい何隻の旧式原潜が海中投棄されたかも分かっておらず不安が募る。
くだんのK19は試験運転中に操作ミスで制御棒が曲がり原子炉解体をしておりその際の溶接棒のかけらが事故の原因の様だが他にもガスケットの交換ミスでの浸水事故を起こしていた。
軍拡を急ぐあまり欠陥を承知の上の演習航海命令であった、放射線防護服も積まれておらず端から乗組員の安全など二の次だったのだろう、修復命令は死に等しい、英雄と持ち上げられても浮かばれまい。史実では余りの痛みに殺してくれと叫んでいたようです。
第三次大戦を防いだという意味では実際の副長だったヴァシーリイ・アルヒーポフ中佐が翌年のキューバ危機・海上封鎖の折に潜水艦B-59の副長として米駆逐艦への魚雷発射を踏みとどめらせた功績のほうだろう、彼のこの決断の裏にはK-19でのニコライ・ザテエフ艦長の決断に接していたことがあったからかもしれない。
人間ドラマの方は脚色もあり実際の乗組員からクレームが出たらしいがハリソンフォードの好演は賞賛されたらしい。不気味なBGMと狭い艦内、緊張とストレスで一気に観終えました。
ハリウッド映画だからと贔屓目に見ても、ハリソン・フォードとリーアム・ニーソンの二人が配役的にお互いが濃いすぎる上、密室映画で常に競合していて勿体ない。どちらに感情移入して良いか分からないままエンディングだし、国家第一主義の艦長が考えを新たにしていく過程が雑すぎて『あれ…いつの間に?』ってなった。
ドキュメンタリーの目線で観ると、チェレンコフ放射と思える青い光の描写もあり、改めて原子力は怖いと感じる。人が制御出来ないエネルギーは使うべきではないし、特に軍事目的とか本来あり得ない事だわ。