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KAMIKAZE TAXI評論(8)
今もまだ地味に活躍する高橋和也と役所公司のやりとりや、ミッキーカーチスの存在感などアクションだけでなく、演技とストーリーが秀逸。傑作です!
本作冒頭でその前年が日本の政治的混乱について紹介している
何故その映像が始まるのだろうか?
本作もまたバブルをテーマにした映画であるからだろう
自民党が初めて下野した細川政権の誕生と、その金まみれの汚職による崩壊もまたバブルが産んだ産物であったと今から見れば良く分かる
バブルの徒花は日本の精神を蝕んでしまったのは間違いない
上から下まで日本人全てがバブルによって舞い上がり精神の深いところまでが汚染された
その頃に日本人は何か変質してしまったのではないのか?
そして海外で育った日本に戻ってきた日本人のほうが日本人の精神を保っていたのでは無いのか?
冒頭で差別されていると説明される日系人達の方が、日本人らしい日本人なのではないのか
これが本作のメッセージであり、テーマであったと思う
右翼的政治家、ヤクザ
極めて日本的な存在であるはずのものが、バブルを経たのち、彼等が日本人に見えなくなっている
政治家は金にまみれている
ゴルフ場で新しいヤクザの担当が韓国語を解するのか試したりするのだ
彼の屋敷も極めて日本的だ
しかし中身は嘘で塗り固められた人間だ
恐らく日本人ですらないのかもしれない
ヤクザはビジネス化しており戦前のヤクザの世界とは切り離され、会長はジャズを愛好してサックスをクラブで演奏する程だ
1995年の少し前だったか、千葉県のある巨大物流センターを視察したことある
各所に掲示してある表示板が日本語と英語でないどこかの言語で書かれていた
何語なのか質問すると、ポルトガル語だという
その物流センターではブラジルの日系人達が多数働いていたのだ
バブルの好況による極度の人手不足が、このような光景を既に生み出していたのだ
東京の居酒屋で注文を取りに来た半纏を着た若い店員が日本語を話せずエキゾチックな顔立ちで、日系人だったり外国人であることに気付かされ驚いたのもこの頃が初めてだった
いまでは当たり前の光景だ
本作では日本の美しい光景を意識して撮影している
その中で寒竹は本当の日本人らしさを示していくのだ
神風タクシーとはかってスピード違反上等のタクシーのことをそう呼んだそうだ
寒竹のタクシーの社名はそよかぜタクシーだ
そして神風特攻隊、ペルーの猛烈な季節風と絡みあわせて物語を紡ぎ出し、テーマを持たせただけでなく、それを娯楽作品として面白く成立させている
監督のその技量はものすごい力だ
ラストシーンにはカタルシスまであるのだ
朝日の逆光の中に佇む寒竹は侍の姿そのものだ
ケーナの音は尺八に似ている
異なる風土で奏でる曲調はまるで異なっていても、寒竹の吹くケーナは侍が尺八を吹くのと変わりはしないのだ
紛れもない傑作なのは間違いない
独特の空気が映画の中を蔓延し、映画の中に入り込んだ。みんなが懐かしいと思う何かがある、せつないと思う何かがある、心に来る何かがある。。今DVD版になってインターナショナル版が出るのもわかる、日本映画のマスターピースの一つだと思う。