抗戦映画の傑作と称せられる「鉄路の戦い」を作ったルネ・クレマンが戦後監督した作品で、「どん底」の脚色者ジャック・コンパネーズがヴィクトル・アレクザンドロフと協力執筆したストーリーを、クレマンがジャック・レミーと協力脚色し、「望郷(1937)」「格子なき牢獄」のアンリ・ジャンソンが台詞を書いている。撮影は「美女と野獣」のアンリ・アルカンが指揮し、音楽はイヴ・ボードリエが作編曲している。出演者は「あらし(1939)」のマルセル・ダリオ、「高原の情熱」のポール・ベルナール、新進のアンリ・ヴィダル、「リビア白騎隊」のフォスコ・ジアケッチ、フロランス・マルリイ、ミシェル・オークレール、新人アンヌ・カンピオン、ジャン・ディディエら。
海の牙評論(1)
ストーリー: 55
キャスト: 65
演出: 65
ビジュアル: 50
音楽: 60
潜水艦物映画かと思いきや、実のところはそうでもない。舞台が潜水艦で殆どが艦内での撮影であるというだけ。その中で終戦前後の混乱をサスペンスとして描かれた映画。密命を帯びて盲目的にあくまでそれを遂行しようとするもの、戦争終結によって殺し合いから解放されることを望むものなど、それぞれの立場が交錯していく。「海の牙」という邦題にはそぐわない内容である。
登場人物はそれなりに多いために誰がどんな人なのかが充分にわかる前に物語が進行してはっきりしない。けっこうばらばらに話が進み、全体的に小さくまとまった感じ。音楽や映像も時代を感じる。