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王の願い ハングルの始まり評論(20)
ただハングル学習者としてはハングルが影響を受けているパスパ文字との比較やハングルの特質であるバッチム(リエゾン)表記をいかに発明したかもっと掘り下げて欲しかった。
又娯楽性を持たせるため冒頭の日本人僧の経文をめぐる諍いや宮殿に巣食う儒教官僚と王との確執など言わばどうでもいいエピソードで辟易する部分も多い。
世界中で作成者が分かっている文字はハングルだけで有りその足跡をもっと詳しく知りたかった。
「本作品は歴史の一節を基にしたフィクションです」だそうです。
八萬大蔵経に纏わる出来事から始まり、僧の力を借りて、簡易で民が学び使える独自の表音文字をつくっていくストーリー。
サンスクリットやパスパ等を参考にハングルを作っていく様は、閃きと発見と試行錯誤を繰り返しで面白いし、明からの圧力やヨダレダラダラ君の仄かな思い何かもあってなかなか良かった。
でも、やっぱりある程度まで話が進むと、変化が乏しくダレてくるし冗長に感じるところも多かったかな。
世宗による独自文字の作成にどんな人材が貢献したのかは不明らしいが、製作や脚本で十数年キャリアを築き、本作で監督デビューしたチョ・チョルヒョンは、世宗が当時賎民階級であった仏僧のシンミ和尚に「国のために世を良くした尊者」との称号を贈ったという史実に着目。サンスクリット語や中国語など多くの言語に通じたシンミ和尚がプロジェクトリーダー的な役割を担ったのではないかと推理し、ストーリーを組み立てた。
国民が誰でも使える平易な文字を作りたいと願う心優しさと、重臣たちの反対や抵抗にも屈しない強い意志を併せ持つ世宗役にソン・ガンホ。権力にこびることなく、王の理想に共感して文字作りに尽力するシンミ和尚役にパク・ヘイル。「殺人の追憶」で刑事役と殺人犯役で対決した二人が、本作では文字作りという目的のために協力する役どころで再共演している点も感慨深い。
すべての発音をなるべく少ない文字数で表そうと試行錯誤する過程の描写も知的好奇心をくすぐる。文字の制作過程の記録なども当然残っていないだろうから、ここはおそらく完成形のハングルの構成要素を分解していき、たとえば口の形を表すパーツを定めるまでにはこんなやり取りがあったはずだ、と創作していったのだろう。機械を分解して仕組みや製造方法を学ぶリバースエンジニアリングの手法に近い作業があっただろうと感じた。
なお映画ではハングルが完成するまでしか描かれないが、その後は使用が弾圧された時期などもあり、すぐに普及したわけではなく、義務教育で必修科目になったのは日韓併合時代の20世紀初頭だという。そう聞くと、ハングルが国民に行き渡ってからたかだか百年ほどで、ハングルをベースにした韓流ポップカルチャー(映画、ドラマ、音楽など)が国際的に躍進している現状は率直にすごいなと思う。
仏教と儒教のせめぎ合い、小坊主さんたちの掛け合い、などなど…
一見単調に見えますがよく見ると衣装が凝っていましたね。
ソン・ガンホさんは流石の演技力ですね。
王妃役のチョン・ミソンさん、とても味のある素敵な女優さんだなと思ったら、
観終わった後にお亡くなりになられたようだとわかり、ショッキングでした。
シリアスで知的な作品、ちょっぴり笑いもあり、わりと好きな映画でした。
でもチョン・ミソンさんがやはり素晴らしいです。ちょうど一周忌。本当に残念です。