スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が、「オール・アバウト・マイ・マザー」「ボルベール
帰郷」など数々の作品でタッグを組んできたペネロペ・クルスを主演に迎え、同じ日に出産を迎えた2人の母親の物語を描いた人間ドラマ。写真家として成功しているジャニスと17歳の少女アナは、同じ病院の産科病棟で偶然出会い、同じ日に女の子を出産。ともにシングルマザーとして生きていくことを決意していた2人は、再会を誓って退院する。ところが、ジャニスがセシリアと名付けた娘は、父親であるはずの元恋人から「自分の子どもとは思えない」と言われてしまう。それをきっかけにジャニスがDNA検査をしたところ、セシリアが実の子でないことが判明。アナの娘と取り違えられたのではないかと疑うジャニスは、悩んだ末にこの事実を封印し、アナとも連絡を絶つ。しかし1年後、偶然アナと再会し、アナの娘が亡くなったことを知る。ジャニス役を演じたペネロペ・クルスが、2021年・第78回ベネチア国際映画祭でボルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。2022年・第94回アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされた。アナ役はこれが長編映画出演2作目のミレナ・スミット。
パラレル・マザーズ評論(8)
例えば邦画だと、まだ記憶に新しい是枝裕和監督の『そして父になる(13)』。
或いは、パレスチナ問題をそのまま取り込んだ衝撃作『もうひとりの息子(12)』。
そして、本作『パラレル・マザーズ』も後年まで記憶に残るなかなかの良作と感じます。
スペイン内戦と歴史記憶法の話に始まり、ジャニス(ペネロペ・クルス)の曽祖父母にまで遡るファミリーツリー。そして曾祖父たちの遺骨採掘のことで繋がる新しい関係アルトゥロ、アナ、またその家族たち、そして生まれ来る娘たち、とそれぞれの関係性がどれも「ドラマ」として面白く、次々と起こることに夢中になります。
そんな展開を活かす意外な「良さ」が、起きていることの衝撃に対して「余韻」を殆ど残さない、バッツリと切り替わる編集。そう聞くとなんだか勿体ないと思うかもしれませんが、むしろ、このテンポ感がペネロペの名演と相まって、悲しみを乗り越え、未来への希望を感じさせてくれます。
そして、最後のシーン「共同墓穴発掘現場」の様子とそこに集う人々の表情が、繋がりと絆を強く感じさせてくれます。
流石、名匠ペドロ・アルモドバル監督の仕事、、とか言って私実は、同監督の古め作品はまだ未見のものが多いです。すみません。でも取り敢えず今作は、好みの一作でした。恐れ入りました。