「幸福城市」のホー・ウィディン監督が、台北駅で発生した無差別殺人事件を軸に交錯する人々の姿を通し、Z世代の若者たちの欲望と苦悩を描いた群像ドラマ。オタクの大学生ミンリャンは、エロティックなライブ配信をするモニカに思いを寄せている。好奇心旺盛な女子高生キキは、コスプレをしてミンリャンを振り向かせようとする。長い航海から帰国した料理人シャオジャンは、カフェ店員ユーファンに恋心を抱く。ユーファンは精神的な慰めを求めて舞台演劇に熱中し、新人女優モニカと親しくなる。モニカが消し去りたいと思っている過去をミンリャンは気にしないが、モニカはミンリャンのことを知らない。やがて、悪夢のような惨劇が起こり……。主演は「恋の病
潔癖なふたりのビフォーアフター」のリン・ボーホン。2021年・第34回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門では「テロライザーズ」のタイトルで上映された。
青春弑恋評論(1)
本作を観ている最中に真っ先に連想したのはブレット・イーストン・ハリスの原作を映画化したロジャー・エイヴァリー監督の『ルールズ・オブ・アトラクション』。登場人物がそれぞれ惹かれ合っているのにどの思いも全く報われないという残酷な不条理も、登場人物達の裏の顔をこれでもかと見せる悪趣味なまでの赤裸々もそっくり。しかし本作が更に掘り下げているのは人間の素顔とはそれを見ている人間によって異なるということ。一見どうしようもない人間であっても、別の誰かから見ればかけがえのない人間かも知れない。自分から見えている光景だけで世界が構成されているわけではないとは知りつつも、自分が見えているものだけでしか世界の良し悪しを判断出来ないなら、ちょっとボタンを掛け違えただけで悲劇はあっさりと引き起こされる。そんな無情を容赦なく描きながらもドン底を味わった人間の再生も温かく見つめている、そんな分厚いドラマでした。