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なごり雪 あるいは、五十歳の悲歌評論(7)
回想シーン。雪子(須藤)も祐作(細山田)も他の学生も皆演技がださい。これが確信犯的だ。大林監督作品はこのダサさで郷愁を醸し出している。
九州の臼杵。実家手芸店の手伝いをしていた祐作は2歳年下の雪子と知り合う。テニス部のマドンナからも好意を寄せられいて、医者の息子とケンカしたりと、なかなかの学生時代。雪子と水田と一緒に仲良くしていたのに、祐作はやがて東京の大学へ進む。夏に帰省したときには恋が進展するかと思ったが、その次の夏には菅井とし子(宝生舞)という同級生を連れて帰ってきたのだ・・・
鈍感で優柔不断な男が中年になって初めて素直になれるといったノスタルジー。あの時、なぜ素直になれなかったのか。都会への憧れと期待がそうさせたのか。それとも本当は春に戻ろうと思っていたのだろうか・・・。それでも大学進学とともにこういう思いをした男は結構多いと思う。せめてキスくらいしていれば、そうはならなかったと・・・
雪子の台詞には伊勢正三の「なごり雪」の歌詞がそのまま使われている場面もあるし、最初の帰省のシーンでは臼杵の盆の美しい風景とともに、雪子の名前の由来を聞かされるところで涙を禁じえない。母親の夫が結婚直後に召集令状を受け取り戦死。悲しい過去へのエピソードがそのまま雪子と祐作にオーバーラップしてくる瞬間だ。
臼杵市が地元のために大林監督に依頼したような映画。珍しく配給が大映となっているところに商業映画ぽさが感じられ、逆に失敗してしまったような気もする。オープニングで伊勢正三の弾き語りシーンがあることから、彼も特別な思いで観ていたんだろうな~。
映画「なごり雪」(大林宣彦監督)から。
大好きな伊勢正三の同名曲をモチーフにした作品とあって、
楽しみにしていたけれど、これほどの名曲となると
自分なりの「なごり雪」のイメージが出来上がっていて、
正直、素直に入り込めなかった、というのが本音である。
それでも時折、おっ、という台詞に出会い、メモをした。
その中の一つが、主役の三浦友和さんがぼそっと呟く、
「子どもの歳で実感するんだよ、自分の歳を」。
「そうらしいな」と、何気なく相槌を打つ相手も50歳間近。
この年代、いくら「自分は若い」と思っていても、
「お子さん、幾つですか」の問いに、答えることで、
「あっ、もうそんな歳なんだ。俺も若くないはずだ」なんて
我に返る瞬間があることを、私自身が思い出していた。
親の年齢でも同じことが言えるな、きっと。
「親の歳で実感するんだよ、自分の歳を」
う〜ん、やっぱりなぁ。