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海の上のピアニスト イタリア完全版評論(3)
キリスト生誕を基準とする西暦の節目の年に生まれ、幼少時に一夜にしてピアノを習得、荒波に揺れる船内でピアノと踊る演奏、熱演後のピアノ弦で煙草の火をつけるなど、奇蹟の数々は1900の聖性を象徴する(俗世に降り立たず恋を追わないのも必然だ)。監督はさらに、人の思いや感情を作品に込める表現者の尊さと、求道者ゆえの業をも描き切った。モリコーネが没した夏に日本公開されるのも奇縁だろうか。
きっとあのテーマ曲を一度も聞いたことのない人はいないでしょう。
そんな数々の名曲を生み出した作曲家エンニオ・モリコーネが先月の2020年7月6日に91歳でこの世を去りました。
このコンビが生み出した名作は「ニュー・シネマ・パラダイス」以外にもあって、まさに本作「海の上のピアニスト」もその一本なのです。
日本では1999年に劇場公開されていますが、当時は40分近くカットされたインターナショナル版での公開でした。そんな名作が20年といった期間の技術革新を経て「4Kデジタル修復版」として蘇りました。しかも9月には「イタリア完全版」(HDリマスター版)も劇場で見られるのです!
本作の主人公の“1900”は、類まれなる洞察力を持つなど、作品では「運命」という概念を通常とは違う解釈にしています。その視点に立つと、この日本公開は、作曲家エンニオ・モリコーネの追悼にも相応しく、まさに「運命」を感じる作品です。
一足早く「イタリア完全版」を見ましたが、上映時間は170分と長めですが、「当初のインターナショナル版ではどこを切ったのだろう?」と思えるほど、自然に優雅な時間を味わえました。
通常のメリハリのある作品とは違って大人な作品ですが、「対決」や「少女との出会い」など、見応えのあるシーンも意外とあります。
何より「洞察力という能力が大き過ぎると、人はどうなるのか」という、かなり深い考察をしている点も本作の見どころです。
万人向きの作品とも思いませんが、劇場の音響でゴールデングローブ賞の最優秀作曲賞を受賞した本作の美しい音楽に浸りながら、数々の名曲を生み出した作曲家エンニオ・モリコーネに想いを馳せてほしい作品です。