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機動戦士ガンダム 逆襲のシャア評論(18)
ファーストガンダムの完結編となる物語です。
少年兵だったアムロの成長は、とても感慨深く感じます。パイロットとしての力量、リーダーとしての統率力、そして地球の命運を託される覚悟。大人と子供の狭間でもがいていたアムロを思い出すと、それだけで満足してしまいます。
それでもガンダムの集大成だけあって、戦闘シーンは迫力満点です。スピード、精緻さ、設定。妙で派手な演出は控えめで、主要キャラクターの戦死シーンもドライに描く手法は、戦争の残酷さを描いているようで、個人的には好感を覚えます。
ただ、全体として時間が足りないように感じます。
例えば、シャアが決起した経緯や動機のエピソードがあれば、もっと物語に入り込めます。
例えば、サイコミュの説明があれば、もっとクライマックスが盛り上がったように思えます。
例えば、クェス達新キャラクターに感情移入する為のエピソードがあれば、戦闘シーンにもっと泣けたかもしれません。
ガンダムのパワーなら、前後半の2本製作しても十分利益を出せたと思うのですが、少し残念に感じました。
それまで自分にとってガンダムという作品は、今でも語り継がれる傑作SF作品だった。子供騙しのロボットものではなく、登場人物たちの複雑な心理や信念をもった行動、組織と組織の思惑の絡み合いや、戦闘ではなく戦争を描いたような重厚な戦記モノとして評価されている作品だという印象を持っていた。
結論からいうと、それは自分の幻想だった。あやふやなイメージでしかなかった。自分で勝手にハードルを上げていたに過ぎなかったのだ。
登場人物は国の指導者レベルまで含めて全員致命的なアホしかいない。小惑星を地球に落としたテロリスト相手に「停戦するからもう一つ小惑星を売ってくれ」などという要求をなんの疑問もなく受け入れ案の定裏切られる。
現代に例えれば、突如ドイツに復活したカリスマのヒトラーがフランスを滅ぼして「核兵器を売ってくれれば停戦する」との申し出に喜んで国連がそれを同意するような感じだ。
シャアというガンダムを知らない人間ですら知ってるカリスマも、公私混同甚だしいヤベェ思想家で作中でもそのロリコンぶりが登場人物間ですら閉口されている。
登場人物が戦闘がガンガン死ぬ割に悲壮感がまったくない。
所詮は日本アニメのよくあるご都合主義ロボットアニメだった。(まぁこれが基本になっているのだから当然か)
それどころか中途半端に戦記モノのような硬派な雰囲気を気取っているせいで、非常に見てていびつな印象すら受ける。いっそバカ向けに、それこそなろう小説みたいなシナリオにしてしまえばいいのに。
大人になってガンダムデビューして、これを純粋に楽しめるほどの童心を、俺は持ち合わせてはいない。
公開当時は劇場に行かず、その後一度観てからはLDからBlu-rayに至るまで新しいフォーマットのディスクが出るたびに買い直す、お気に入りの作品となっていた。
というわけで、劇場で観る機会は本当に貴重であり、こんな時だがあえて劇場に足を運んだ。
結果大満足。冒頭の月面へ徐々に視点が降りていくシーンや、整備中のガンダムにアムロがとんとんと登っていくシーンなど、大画面を意識して設計されたと思しきシーンの数々を堪能。クライマックスの迫力には、飲み込まれてしまった。
物語の内容としては、やはり多くの人と同様にクエス&ハサウェイに苦手意識はある。しかし年齢のいったアムロとシャアの物語に、何をしでかすかわからない思春期の若者を登場させて、予定調和を壊そうとした意図もわからなくはない。
ただ若干壊しすぎたのかも。
かつて観た曖昧な記憶の中でどんどん印象だけか良くなって、いざ再鑑賞してみたら残念至極。
みんな自分勝手。
シャアからして隕石落としの動機が、アムロに対するララァママを奪われた逆恨み。
クェスの情緒不安定な行動は見てて嫌悪感しか感じない。
それに一方的な好意を抱いたハサウェイが逆上して味方を殺してしまうし。そんな奴が次の映画の主人公になるとは。
唯一安定して人間らしさを持っているのはブライトのみ。
ただ、日本の大切な文化の一つだから、終らせては欲しくないシリーズ。