恐怖ノ黒電波劇情
恐怖ノ黒電波，ディストピアと化したトルコを舞台に、エンジニア変死事件の行方を独創的な展開と精緻なビジュアルで描いた悪夢的スリラー。
管理社会と化したトルコ。政府のプロパガンダを全ての住人に提供するため、古い高層アパートにテレビアンテナが新設された。しかし作業に携わったエンジニアが不可解な死を遂げる。やがて、事態の裏に隠された邪悪な意図が浮かび上がり……。
「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020」（20年10月30日～11月12日、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか）上映作品。
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恐怖ノ黒電波評論(2)
- Power, is our fate. -
今や地デジと衛星放送の時代。今でもテレビを見るときには、電波を受信するために欠かせないのがアンテナ... ネットは別として
一般的には屋上などの室外に設置されているけど場合によっては設置されていなかったり、設置できなかったりする時に活躍するのが、安価で高感度の室内アンテナ。それを利用している方は多いのかもしれない。
地デジなんてない南半球の島国のYMCA... 当時としたらホテスルや個人経営のホテルよりも安価で手続きなんかも簡易であったYMCAを長期滞在するためのフラット(ルームシェア？)を見つけるまでのステップとして必ず利用していた。しかもダウンタウンまで歩いていける距離で... 貧乏人にとっては天国のようにありがたい一泊1000円で円安でも泊まれた時代... 一日の外での食事代とあまり変わらないだけでなく、いつ行っても予約することなく飛び込みで部屋にありつける奇跡のようなことと、今、振り返ると思える。一人で夜を過ごすには受験生じゃあるまいし、ラジオなんてケチ臭いものなんてより、テレビを見たくなるのは人情ってもので、たしかに1Fにはテレビがあったとしても門限もあり... そんなラッキーづくめには落とし穴がつきもので、テレビを借りようとレンタルショップに行くと、高圧的で根掘り葉掘り聞かれ、どちらがお客さんなのか分からなくなるような店員の脱サービス感を味わうこととなる。その当時のシステムとしてTVライセンス制度を設けいて、テレビを所有するために許可証を購入するというシステムをとっており一回だけ許可証の名目で受信料を払った記憶がある。ただし、この前ググったら撤廃されているとの事。イギリスのBBCでも受信料撤廃の動きがあり、こう世の中、色々な放送媒体のある中で離島は別として、公共放送の "中立性" 一言だけで片づけてしまうのは無理があり過ぎるように感じる。 長い前振りは終わり... 失礼
オッとそれとイヤホン・ジャックがついていない? 日本と違う環境ってか？
Now we proceed to the important news of the day. With the efforts of
the Ministry of Telecommunication, our country is entering a new era.
This new technology, which will firstly be utilized by state channels,
allows shared usage of common satellites in apartment buildings.
Assuming the project goes as planned, each residential unit will have
access to a central broadcast system before summer. With the
implementation of the new system, regulations and programs will be
broadcasted first handedly and regularly, via daily bulletins. Today
will be the starting point of this long planned system. Authorities
report that the system will start a new era, which will result in radical
changes.
トルコの恐怖映画「Bina：英語訳 ：antenna」... この映画の事をいい加減な言い方をするなら、全体を通して、訳の分からない映画。結末なんて何ですか？ これは..とつい言ってしまいそうになる典型的・代表的な理解することを敢えて観るものにさせない、拒んでいるといってもよい代物の映画。
The building is solid, you are weak. Even the smallest things set you
off. Something's not right, let's take the satellite dish down. Mehmet,
I'm telling you, pull yourself together！
一言で難解といえる映画を観た時、必ず思い出すのが、一人の映像作家と二人の小説家の事...
60年代後半から70年の頭までのミュージック・シーンに欠かせないのが夭折3人組... ファンにとったら、嫌な言い方かもしれないけど、その中の一人、"The Doors" のフロントことジム・モリソン。彼がオルダス・ハクスリーのエッセイ「The Doors of Perception」からバンド名を "The Doors" と名付けたいきさつから... メスカリンを主成分とする "サイケデリック・ドラッグ(Psychedelic drug)" を使用した実体験をもとに書かれた作品で、著名人からはかなりバッシングを受けたものの、彼をこよなく愛する人たちは一般人を含め今でもかなりの人がいるのは事実のこと。
薬物中毒、少し差別的な響きがある言葉... 失礼。
何を思ったか？ ウイリアム・テルのように妻の頭にリンゴを乗せ、弓矢の代わりに拳銃で... "Oops！" いわゆるイタイ系オヤジの代表者：ウィリアム・バロウズ。彼がヘロインの中毒症状が出ている時に書いた"Nonlinear narrative" といわれる非線形で時系列では語れない小説「Naked Lunch」。しかし、「ハードボイルドの中身は過去に経験できない代物」と誰か形容するほど、支離滅裂とは断罪できないところも
映像作家としての意気込みが感じられるデヴィッド・クローネンバーグ監督。彼による1991年製作の映画「裸のランチ」... 訳の分からないイタイ系ウィリアム・バロウズの小説「Naked Lunch」を、チマタでは誰もが実現不可能と思われたものを実現したある意味、超がつくほどの変態的執念と発想の持ち主の映像作家の代表格。
イタイ系オヤジ臭・全開な方たちを思い出してしまう。悪質な例え方... ファンの皆様、失礼
The guy got out on time. Now they'll go on and on about it all day.
この映画は、全ての人が、"くだらない映画"・"見る価値のない映画" と公言しても許される映画で、シナリオらしいシナリオもなく、よくこんな映画を製作したもんだと悪態も観ている先から口から思わず吐いて出てしまうのは当然のことといえる。でもそんな映画でも... 蓼食う虫も好き好き
The midnight bulletin has taken effect. Masses are on the move. Sea
transportation has halted due to strong wind.
Differences in opinion will not be tolerated. It is now eight o'clock.
The changes in our surroundings... It is now eleven o'clock.
Insufficiencies are rapidly remedied. We believe that this issue will be
resolved by the end of the year. Citizens spotted outside after
midnight, will be taken into custody.
Midnight bulletin...
The loyalty of citizens will be determined by the Court of
Commitment. Dreams will be controlled and recorded, as per the
unanimous decision. Members of the resistance have been caught
and slaughtered. Our leader has emphasized...
The judicial system... Lovers attempting to cross the border were
neutralized.
Tears... In many parts of the country... Institutes...
若いトルコの映像作家が見つめる先は、デビッド・リンチの"不気味な異世界観"でありクローネンバーグの"生物学的ボディ・ホラー"なのかもしれない。
この映画は、ビルの管理人であり、雑用係の御用聞きの男の人が、朝目覚め、ルーティーンのような生活が始まるところからスタートする。見るからに寝不足が分かる風貌と「眠れなかったのね？」と聞かれ、不眠症であることが自ずと分かるが、それを象徴するかのように彼が務める古びたアパートに行くまでにはシンメトリーなビルを背に空は何時晴れることも知らないグレーで街並みは色のあせたダルトーンの世界観が憂鬱さを増している。守衛室に着くといきなり離れた場所に黒いものが落ちてくる。それも一瞬の出来事。はっきり見せない、その感覚が非常にいい。
理想的な生活の下で暮らしている者たちへのあたかもシニカルな注意メッセージのように... 暗いアンダーグラウンドの要素を私たちに見せることに喜びを求め、物事が常に気がめいり悪いことを私たちに知らせ、粘性カタの黒いゲルによって、アパートの住民は悪い方向に向かってしまう。そして映画は言葉を失ったようなモノトーンのパレットの中に存在し、アパートの外観とインテリアは汚れて白く濁り、人を襲う粘性の高いゲルは黒さの深みを増す。次には、あたかもキューブリック監督のオーバールック・ホテルのようなシンメトリーさに打ちのめされる事をヨシとする映像となり、夜間のシーンを支配する低照度による雰囲気作りに現れ、不確実性の悪夢のような空げきの間に住民を巻き込み、オルチュン・ベフラムの世界観が永遠に続くようにシナリオの遅さに気分がさらに滅入ってしまう。しかし、いつも批判の対象となるハリウッドで安直な安上がりな恐怖映画の付き物のジャンプ・スケアは存在せず、映像を支えているフィルム・スコアの何とも言えない低音質でしかも精神を威圧する耳障りで何とも表現ができない心地の悪さが印象的に耳に残ってしまう。
大きなお世話様として、この映画を観るのをためらった方が、得策といえるけど映画の内容としたら、監督の独自性が分かるかも？ Media and Law Studies Association（通称：MLSAはトルコの非営利団体で、トルコで民主主義と正常化に戻る必要性が高まっている緊急のニーズに応えるために2017年後半に設立。)によると現政権エルドアン政権下の強権的な部分が垣間見ることができるのが数字で表れている。2017年には約11,000人のジャーナリストが失業し、114人が拘留され、1,500人が裁判にかけられていると、その内容をドイツ連邦共和国国営の国際放送事業体：ドイチェ・ヴェレ(イニシャリズム：DW)が伝えていた。
エルドアンを暗に批判するには、これぐらい抽象化した方が無難で安全な主張なのかもしれない... あくまでも個人の考えを前提として
この映画の配給会社：ブラウニーって、2011年の松竹配給映画「恐怖ノ黒電話」の"話" ➡ "波" に変えただけの題名って... 何よ？
政府の肝煎りで国営放送用のアンテナを設置してから奇妙なことが起きはじめる。ここから先は、世にも奇妙な物語のトルコ版といった感じだが、集合住宅の外の世界がもう少し語られていたら世界観がつかめたと思う。
ラストはちょっと間延びしたね。ストーリー的に90分くらいの尺がちょうどいい感じ。