黒澤明が、自分の見た夢をもとに撮りあげた全8話で構成されるオムニバス作品。黒澤を師と仰ぐスティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスが製作に協力し、ワーナー・ブラザースが配給を担当、まさに世界のクロサワならではのスケールの大きな作品。様々な夢に不安と希望を織り交ぜ、文明社会への批判と人間の自然とのかかわりの大切さを説いたこの作品は、黒澤明が一貫して追及してきたヒューマニズムの結晶といえる。ルーカスのILM社よる特撮の他、ハイビジョン・システムでの合成を導入。幻想的な雰囲気の映像と豪華なキャストで話題となった。
夢評論(19)
数少ないセリフの中で考えさせられることが多かった。
特に原子力発電所の話は、
原発事故を予知しているようで、ゾッとした。
永遠と続く不気味な雰囲気は、何か惹きつけるものがあった。
特に若い世代に見ていただきたい。
気になって見てみた。
夢の世界を扱ったオムニバスで何処と無く不思議な
非現実の世界の中に、幼少期の子供の感覚を思わせる怪異めいた話から、雪山の遭難、敗残兵が戦死した霊に出会い悔悟する話、原発による世界の週末、牧歌的な天国を思わせる幻想郷と一連のストーリーがある。
最後の話の老人の話が身につまされる。生きることは楽しい。死とは大抵においてめでたいのだ。
悲惨な話が挟まっていたはずなのに、心地良い余韻と共に終わる、穏やかな不思議な映画である。
当時小学生だった僕は、テレビの中のあの不思議な映像、そして妙な安らぎと不安の入り交じる世界観に気が付けば恐怖と戦いながらテレビにかじりついて見ていました。
子供には理解できない内容の映画。
たぶん一般的にはそうかもしれません。
でも違う気がします。
決して優等生ではなかった当時の僕が、意味も分からずあの作品にのめり込んだ。
ゴッホの絵など興味なく、戦争だって知らなかった。オムニバスなんて言葉すらしらなかった。
なのにどうしてあんなにかじりついてみててたのか?
巨匠・黒澤明。彼はあんなに難解な内容を無知な子供の心にまで投げかける、あまりにも偉大な人だったのではないでしょうか。
今、福島が荒れています。
ニュースで目にするたび、僕の頭にはあの映像が出てくるのです。
上着を脱ぎ、必死に色のついた煙を払う男の姿を。
放射能物質に色をつけたってなんの意味も無いんだ…と叫び必死に煙を払うあの男の姿を。
今から10年以上前に、この惨状を皮肉っていた黒澤明。
もし彼が、ほんとうにこんな夢を見ながら毎晩寝ていたのなら、
彼の作った作品が、ことごとく名作になるのは当たり前と言うしかない訳です。
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:75点|音楽:65点 )
社会や人間への風刺や批判などが盛り込まれているものもあるが、監督の思うところをそのまま映像化したようなものもあり、全体的に抽象的な内容で分り辛い。有名小説家の短編集にこのようなものがありそうだし、実際に夏目漱石の「夢十夜」から作品の基本は来ているのだろう。映画というよりもそんな文学的な作品。外的な動きよりも心の内面を表現しようとする。
一番気に入ったのは、隋道から兵士が登場する一遍。部下が全員死んだのにたった一人だけ生き残った隊長の立場を考えると居た堪れない。自分が死んだことを認め難く現世を彷徨う兵士たちも哀れだが、重い重い枷をはめられて今後を孤独に生きていく隊長も辛い。野口一等兵が「あれが自分の家で・・両親が待っている」と言っていたので、多分隊長は部下の死に際を彼の両親に報告するためにわざわざ部下の家を訪ねて来たのかもしれないが、その仕事も辛い。もし自分がこの立場だったらと考えてしまう。
ゴッホの一遍では、みんなフランス語を喋っているのにゴッホがいきなり英語を喋るのに違和感。配役をみるとなんとマーティン・スコセッシだった。彼が出ているのは最初に観たときには気が付かなかったが、こんな人が登場しているとは思わなかった。