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L\'amant ラマン評論(1)
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映画は、なぜチカコがそんなことをするのか、三人の男たちは何者なのかといったことがまるで説明されないまま、一年間の“非日常的な日常”を断片的に描いていく。
時間が経つにつれ少しづつそういった理由もほのめかされはするが、一方で、安藤希が二役でもう一人のハナコとして登場したり、突然大杉漣演じるCが何者かに刺されたりして、謎は深まるばかり。
最終的にも説明されない謎が多く残る。だからといって謎解き映画ではなく、少女の成長物語、一応。
結局のところ、謎は謎ではなく、チカコも含めた人々の側面を局所的に切り取って見せることこそが監督の狙いだったようだ。
この映画で印象的なのは、繰り返される非日常と日常の対比。
登場人物の名前すら匿名とし、それぞれの背景をあえて隠し、曲者揃いの役者陣には極力感情を抑えた芝居と、映画として成立しうるギリギリまで抽象化しておきながら、一方でごくありふれた日常を描いて物語を転がす。
愛人たちとの密会の館で夏休みの宿題をするチカコなんてその際たるもの。男たちも援助交際などという俗な言葉では表現し切れない特殊な関係にもかかわらず、お兄さん、お父さんの如くその宿題を手伝う。
中でも一番印象に残ったのは、学校近くの病院に入院した刺されたCを見舞ってチカコが花を届けるさり気ないシーン。このありえない状況下でのごく自然な振る舞いこそがこの映画の神髄のような気がする。
四人で打ち上げ花火を観ているシーンで、チカコの「この男たちもかつて子供だったんだ」とのモノローグが入るが、そんな当たり前のことの再発見を、観客もことあるごとに追体験させられる映画なのだ。