マリ・サンドスの同名小説をジェームズ・R・ウェッブが脚色、「リバティ・バランスを射った男」のジョン・フォードが演出した西部劇。撮影はウィリアム・H・クローシア、音楽はアレックス・ノースが担当した。出演は「西部開拓史」のジェームズ・スチュアート、同じくキャロル・ベイカー、「7人の愚連隊」のエドワード・G・ロビンソン、「誰が私を殺したか?」のカール・マルデン、「アラビアのロレンス」のアーサー・ケネディ、「栄光への脱出」のサル・ミネオ、「長い船団」のリチャード・ウィドマーク、「ビッグ・サーカス」のギルバート・ローランドなど。製作はバーナード・スミス。
シャイアン評論(1)
かつては自らの作品の中で、白人の敵である幾多のアメリカ原住民を一方的に殺してきたジョン・フォード監督が、驚いたことにここでは一転して白人のシャイアン族に対する残虐さを描く。日本では白人とアメリカ原住民の戦いのことは知られていても、白人が豊穣な土地を奪ってアメリカ原住民を不毛の地への強制移住させて大勢が死んだという話はあまり関心を持たれていないので、それを映画で取り上げたのは意義がある。今でも政府の指定するアメリカ原住民の居留地は不毛の土地だったりする。西部を車で旅行した時、なんで彼らはこんな砂漠地帯にわざわざ住んでいるのかと思ったが、なんのことはない、強制されていたのだ。
古い映画なのであまりに残酷な部分を直接見せないし、故郷を追われ強制移住させられて飢えと寒さに苦しむシャイアン族の描写は間接的で生ぬるい。しかし誤解と偏見をもって差別をし、力で抑えつけ守る気のない約束をして彼らの生命を軽んじる政策をとるアメリカ政府の歴史を描いたのは立派。白人側にもアメリカ原住民に家族を殺されて恨みがあったりする者がいたりして、それぞれの事情も伺える。お互いに恨みだけが積もって複雑な状況が生まれているのが見て取れる。
しかしこの深刻な作品の中にワイアット・アープの喜劇が途中で登場するのは蛇足。急に雰囲気が変わって軽薄になるだけでなく、話の本筋に関係がない。広大な大地を描く映像はいつものごとくモニュメント・バレーでの撮影で壮大だが、砦の場面では急に作り物感にあふれてしまうのも良くない。