「罪の声」などで知られる作家の塩田武士が大泉洋をイメージして主人公を「あてがき」した小説を、大泉の主演で映画化。出版業界を舞台に、廃刊の危機に立たされた雑誌編集長が、裏切りや陰謀が渦巻く中、起死回生のために大胆な奇策に打って出る姿を描く。「紙の月」「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督がメガホンをとり、松岡茉優、佐藤浩市ら実力派キャストが共演する。出版不況の波にもまれる大手出版社「薫風社」では、創業一族の社長が急逝し、次期社長の座をめぐって権力争いが勃発。そんな中、専務の東松が進める大改革によって、売れない雑誌は次々と廃刊のピンチに陥る。カルチャー誌「トリニティ」の変わり者編集長・速水も、無理難題を押し付けられて窮地に立たされるが……。
騙し絵の牙評論(20)
出版業界と一言で言っても、出版社、書店、(出版社と書店をつなぐ)取次店、そして、著者など本当に多くの役割があります。
本作の大泉洋が演じる主人公は、多くの出版社を渡り歩いてきた編集者です。
そのため、持ち球の多さや発想も面白く、それが見どころの一つとなっています。
また、タイトルに「騙し絵」とあるように、「表の顔」と「裏の顔」など、何が本当で何が嘘か、も興味深い内容となっていました。
とは言え、本作の最大の魅力は、人間模様の面白さだと思います。
大泉洋を筆頭に、松岡茉優など文字通り全員の演技が光っていて、それぞれのシーンがどれも興味深く面白いものとなっているのです。
これは、シーンに合わせた音楽の使い方もかなり上手く、さすが吉田大八監督といったところでした。
最後に、出版業界に長くいる立場からの感想です。
松岡茉優演じる編集者の実家は小さな書店ですが、こういう地域に大切な小規模な書店が全国で無くなってきています。「ネットで買えばいいのでは?」となりますが、高齢化社会ではなかなか厳しい面も大きいのです。どうにかして今の流れを止めないと、という社会問題は意外と大きいのです。
その一方で、世の中は出版業界にはそんなに興味がないのも現実だと思います。例えば、大手出版社の名前は知っていても、その会社の社長まで知っている人は(業界人でないと)いないですよね。
その意味で、本作の「テレビニュースの場面」については、少し違和感を持ちました。なぜなら、出版社の社長の人事や、新人作家のデビューなどはテレビで取り上げられるようなものではないからです。
本作を見た際には、この点が気になりましたが、映画はエンターテインメントでもあります。この見せ方が一番分かりやすく観客に情報を伝えられるベストな手法なのかもしれません。
そう考えると、これはそういう設定だと割り切りながら見るのが正解だと思います。
もし出版業界の人が見て気になったら、こういう「変換」をしてみることをお勧めします。
・本が好き。別に年間何冊以上読んでるとかは関係なく。
・あんな店主のいる本屋さん、いいな。
・え、その娘が本好きの新人編集者の松岡茉優さんだって❗️
この三点だけで、理屈抜きに満足度は最高でした。
という方が、他にもたくさんいて欲しいなと願ってます。
以前、『ビブリア古書堂の事件手帖』で〝どうやら監督も脚本家も実はあまり本好きではない〟疑惑でガッカリしたことがあります。
血生臭い事件や怨念などがまったく出てこない、爽やかで痛快などんでん返しの連発。
もちろん、痛快さの一番の要因は松岡茉優さん‼️
ラストの3万5千円までの件(くだり)、あれはきっと、原作者の夢なのだと私は思いました。たぶん、その思いを汲んでの終盤の演出だったのだろう、と監督にも敬意と感謝を捧げます。
格好だけの文壇の重鎮。
謎の小説家、エセ小説家の登場。現実的利己的な専務→代取の佐藤浩市と保守的な常務佐野史郎の一騎打ち。
廃刊危機、カルチャー誌トリニティ編集長の大泉洋が、もともと小説薫風にいた松岡茉優を巻き込んでのトラブル込み込みの大勝負。
私は劇場の事前の無料チラシ見て人物背景頭に入っていたから容易にスクリーンに没入できたのですが、コレから観る人はホームページか何かで人物相関図あるだろうから、一応目を通しておいた方が内容が細部まで楽しめます。
現実の業界の動向?主人公の器がでかいというか奇抜な攻めの姿勢に魅せられる。あとどこの会社や組織でも程度の違いこそあれある内部の力学、対立が面白い。現実の出版業界知らないので、現実に則しているかは分からない。いわゆる「取次」システムもそうだ。
ただ文書のペーパレス化やAmazonとの提携は現実的。今電車に乗って、日経新聞の朝刊以外は稀に、スポーツ新聞の爺さんや図書館のバーコード入った本読む人いる以外は、受験生の参考書除き、雑誌含め本読む人皆無に近いからなぁ。
確かにスマホ便利だしゲームで暇潰す方が楽だから仕方がない。大泉洋がハマり役。とボケたキャラでもやるときはやる。
でも結局は創業家の社長の息子かよ!っていうのがちと残念。
最後の亡き父を偲んで、謎の小説家都市伝説の小説家の作品を、松岡茉優が、書店から@3万5000円でハードカバー販売はちょっと理解できない。今どき所詮作り物の小説にそんな高額払う人はいないと思うよ。もう、さまざまな娯楽情報の中で、新聞ですらアップアップで先行き不透明なのだから、ハードカバーの小説、あり得ないと思いました。町の個人経営の本屋が壊滅していくのは寂しいし、辛い現実だけども。仕事に必要な専門書なら高額でも買うけど。映像配信だけで十分な時代だよなぁと思いました。虚構の創作物はね。
あと、社長の佐藤浩市のキバ計画がよくわからないのが残念。描写が不十分。
ただ、事前に軽くネットで人物相関図入れておけば、テンポも良いし、とボケた感じで楽しめます。カップルにも一人様にもオススメします。監督吉田大八によるところは大。
そんな中大泉洋演じる雑誌編集長が強行突破のどんでん返し。面白いことは面白い。
ただ単調な流れなので、盛り上がりに欠ける作品ではある。