精神病院帰りの知的障害の殺人犯と少年の心の交流を、味わい深いタッチで描いた一編。主演・監督・脚本は、本作でアカデミー脚色賞を受賞して一躍脚光を浴びた『ファミリー
再会のとき』(V)のマルチ・アーティスト、ビリー・ボブ・ソーントン。製作総指揮は本作を製作したザ・シューティング・ギャラリーの設立者(ボブ・ゴッシと共同)でもあるラリー・メイストリッチで、製作は同社に所属する『カフェ・ソサエティ
背徳の群れ』(V)のブランドン・ロッサーと『ニュージャージー・ドライブ』(V)のデイヴィッド・ブッシェルが担当。音楽はミュージシャンでもあるソーントンらしいセンスで、U2、ボブ・ディランなどビッグ・アーティストのプロデュースで名をはせるダニエル・ラノワが起用され、独特の空気感を漂わせた音で聴かせる。共演は「8月のメモワール」のルーカス・ブラック、人気カントリー・ミュージシャンのドワイト・ヨーカム(「ロズウェル」)、「ノース
ちいさな旅人」のジョン・リッター、『ブルースが聞こえる』(V)などのナタリー・キャナディ、「エグゼクティブ
デシジョン」のJ・T・ウォルシュ、「フェノミナン」のロバート・デュヴァルほか。また、「デッドマン」でソーントンを起用した監督のジム・ジャームッシュがカメオ出演している。97年アカデミー賞脚色賞受賞、主演男優賞ノミネート(ソーントン)。
スリング・ブレイド評論(13)
母殺しで長年精神病院に入院していた主人公が退院し…という話。
序盤の、優しく穏やかな空気感あふれる描写は素敵で、引き付けられる。
また、街の誰もがそういう境遇の主人公に偏見を抱かず、
ある種の理想郷が描かれていて癒される。
しかし中盤から、ありがちな悪役の登場により一気に安っぽくなる…。
そこで改めて冷静に観てみると、色々と腑に落ちない内容である。
まず主人公による殺害は動機が不自然だ。
母や悪人を殺したとしても、誰も得しないのに。
そして、主人公は一見すると発達障害にみえるがなぜか。
発達障害と、倫理観の欠如等の精神病質は別物で、関係はないはず。
「知恵遅れは犯罪を犯しやすい」という偏見が根底にあるのでは。
序盤との対比も踏まえると妙な意図を感じた。
シンプルなストーリーの中フラットでありながらも時間の長さを感じさせない作りはうまい。穏やかな中に程よい緊張感があり、全体としてはハートウォーミングな知的障害を持つ殺人者と子供の交流といった感じ。登場人物全員が優しいからこそハッピーエンドにしてほしかったなぁ。
大切な人を守りたいからといえど殺す程か…いや知的障害があるから…いやでも…
悪人扱いされていたがドイルはただのチンピラだし、子供にサラダをよそったり優しさも垣間見える。母はダメ男に入れ込むが息子の為もあるだろうし何より誰にでも優しい。子供も満たされてないにしてもそこまで不幸でもない…そんな中であのラスト。子供の為を思い自分の過去と重ねたからこその行動だろうが、結果的に救われたのは病院に戻りたかったカールだけじゃない?
しかしもし、もしもカールの母親を殺したのがカールじゃなかったとしたら。知的障害をもった息子にその罪を父親が擦りつけていたとしたら。
父と対峙するシーンは父親の愛を乞う25年前の少年の姿、涙が出た。父の座る椅子の壁に飾られた沢山のキリストが印象に残った。
ビリー・ボブ・ソーントンの演技が素晴らしかった。
途中から二十日鼠と人間のレニーに見えてきてた…
ところどころでヒヤッとさせられる伏線はあって、やはり最後その通りになる。ストーリー的にはよめてしまうが、題材がソリッドなのに対して映像と音楽がなごやかで素敵なギャップがある。
またみたいとは思わないけど好きなタイプの映画
とても淡々とした作品。
少年時の殺人によって、長期間精神病院に入っていた知能障害のある中年男性を中心に、彼に関わっていく少年とその周りの人たちを描いている。
もちろん、単に平和な作品では全くなく、穏やかな性格でバイブル等についても学んだ主人公が、自分の大事な人たちが追い込まれていく状況を目前にして、最終的には彼のスタート地点である殺人行為に行き着く。
彼がやや簡単にその結論に達したような印象があり(そこまでは追い込まれていたか?特に母親にもっと何かできたのでは?)、仮にそれが少年への愛情の表れだとしても、それまでの彼の泰然自若とした態度からは少し残念な印象が残った。
結局、殺された彼氏が一番悪いのは勿論だが、ずるずると関係を断ち切れなかった母親にも納得はいかない。
ビリー・ボブ・ソーントンが障害のある主人公を熱演。彼の他の作品を観れば、本作での演技の凄さを実感する。