フランス映画の社会派、「洪水の前」のアンドレ・カイヤットが、アルメニア生れの青年作家ヴァエ・カッチャの原作をとりあげた復讐劇。この二人が共同で脚本を執筆、「女と奇蹟」のピエール・ボストが台詞を担当した。撮影は「歴史は女で作られる」のクリスチャン・マトラ。「陽はまた昇る」のジュリエット・グレコが吹替えで一曲歌っている。主演はドイツ出身の国際俳優「眼下の敵」のクルト・ユルゲンス、イタリア出身、「大いなる希望」のフォルコ・ルリ。他にレア・パドヴァーニ、パスカル・オードレ、ポール・フランクール等が助演する。
眼には眼を評論(5)
アラブの某国、非番のフランス人医師が急病の妻を診てくれと頼んできた男を邪険に断ってしまう。
結果妻は死亡、その日以来フランス人医師の周りで不可解な事が続き・・・。
常人には理解し難い男の徹底した復讐心とその手段が最大の見どころ。
アラブ社会と白人社会との延々と続く相互不理解の縮図とゆう捉え方も出来る。
またこの男が紳士的でムチャクチャ人の良さげなオジサンに見えるから余計に怖い。
見終えた後の感想はもう一言''絶望''。
もっと若い時期に、ましてやリアルタイムで観てたら、一生消えないトラウマ映画になってただろうな。
劇中に入り込むことさえ難しく、
好きにはなれない。
復讐劇との予備知識で観たが、
そうとすると復讐者の行動が
余りにも不可思議で、
途中からひょっとしたら、
これは主人公が復讐と思い込んだ
幻想のドラマかと思ってしまった。
しかし、
結局は予備情報通りの復讐劇だった訳だが、
余りにもリアリティに欠けていないか。
医師を逆恨みするのは、
そもそもが冤罪に過ぎないし、
どんなに妻を愛していたとしても
娘や両親を残したまま、
己の命の危険を冒してまで、
このような行動に出るだろうか。
また、こんな復讐劇に至らなくとも、
この地に精通している彼なら、
いくらでも復讐の方法は有ったはずではないか。
人が人を裁く問題をテーマにしたという
アンドレ・カイヤット監督だが、
個人的復讐劇に過ぎないこの映画では
その目論見を余りにも矮小化していないだろうか。
「裁きは終わりぬ」が余りにも素晴らしい
作品だったので期待して鑑賞したが、
カイヤット監督に対する評価が一気に下がってしまう作品だった。
評価が高くても難しく楽しめない作品が多い中 こういったわかりやすく心理的にも恐怖に感じる作品は良いと思う