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母桜 プロット 日本 11月16日 1960 台灣上映
徒桜 プロット 日本 10月29日 2021 台灣上映
修羅桜 プロット 日本 04月05日 1959 台灣上映
薄桜記 プロット 日本 11月23日 1959 台灣上映
桜の温度 プロット 日本 10月29日 2011 台灣上映
薄墨の桜 プロット 日本 03月11日 1977 台灣上映
山桜評論(11)
冒頭のシーン、女は山桜を栞ろうとし、男は無言で手折って渡す、ほんの僅かに発した言葉に女は静かに胸を熱くする。春爛漫の山里で四方に満開の花を拡げる山桜、美しい日本の春の里山の情景が心に深く沁み込みます。
女の手が届きそうで掴めない花、これを女の幸せと擬えた時、上品で清澄な優美さに満ちたこのシーンが、本作を象徴し、如実に物語っているように思えます。
本作は、先日NHK BSで放映された2008年公開の、藤沢周平原作の短編を篠原哲雄監督、田中麗奈主演で映画化した作品で、舞台は江戸後期、藤沢作品にはお馴染みの北国の小藩・海坂藩。
嫁ぎ先に恵まれず不幸な結婚生活を耐え忍ぶ女が、嘗て縁談を断った武士との偶然の出会いをする。男が、私腹を肥やす家老を白昼斬殺するという事件が起き、これを通じて男の実直さ高潔さ、強く気高い正義感と行動力、潔さ、そしてその後、男が心奥に秘めていた真情に触れ、女は来し方を見つめ直しこれからの生きる道を見霽かす、という、事件を除けば、取り立てて抑揚のない淡々と粛々と静かに揺蕩うような筋書ですが、観終えた後に清楚な爽快感が残り、台詞、特に心情を吐露する台詞が殆ど無いながら、それ故に却って沁み沁みと心に伝わってくる日本人の心根の琴線に触れた心地良さ、清々しい快感が得られました。
時代劇の様式美、心情風景を台詞でなく、所作・表情・情景で描いた美しい作品です。
田中麗奈が武家の女を、意外に器用に熟しており、作品にしっとりした落ち着きを与えてくれましたが、相手役となる東山紀之の颯爽とした凛々しい武士が一層引立てていました。彼は今最も時代劇に適っている役者の一人であり、特に太刀捌きは、上背もあって見栄えも良く現在の俳優の中でも出色でしょう。ラストに登場する富司純子は流石です。作品に重みと爽やかさを齎してくれました。
家紋って大事だと知っていたけど、落とすとどういうことになるかわかりました。
それにしても田中麗奈ちゃん、キャピキャピの現代っ子の容姿のようで、時代劇にも合うのね。何より画面が明るくなるのがいいね。