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インフォーマント!評論(13)
ソダーバーグ監督にしてやられました、監督は「エリン・ブロコビッチ」で公害訴訟の傑作を作っていますし、主人公が好青年のマット・デイモンだから勝手に善い人と思い込んで今回も大企業の不正を暴く社会派ミステリーと錯覚してしまうでしょう。
マット・デイモンは変な髭をつけているし、ふざけたモノローグを入れるので興が削がれるのだが、これは怪しい映画ですよと、観客を騙すことへの監督のエキスキューズだったのかもしれませんね。
リジンという動物飼料添加物の国際的カルテル事件は日本の味の素と協和発酵も関与していた実話ですね。主人公のマーク・ウィットエーカーは26歳でコーネル大学で栄養生化学の博士号を取得、ドイツの大手化学会社エボニックインダストリーズに就職し若くして副社長を務めたのち32歳でADM社のバイオ製品部門の責任者に就いていますから超エリートですね。
その割にはすぐばれるような嘘ばかりでは子供じみてみえますし、クレジットにも誇張とありましたので映画がどこまで真実か疑問です。
FBIに内部告発し国際的な巨大カルテル摘発の功労者であることは事実ですが、自身の横領も暴かれて失脚では白けますね、カルテル事件より重い量刑を課せられるのは弁護士の腕の差かも知れません。それにしてもマットの頭の変貌ぶりは何と言うことでしょう、元からカツラで騙していたのかと疑心暗鬼に輪を掛けられました・・。
アメリカ社会が不思議なのは2006年に出所したマーク・ウィットエーカーがカリフォルニアのバイオテクノロジー企業であるCypress社の社長に収まっていることです。
ニッサンのゴーン事件もそうですが司法取引がらみの経済事犯は真相が分かりずらいですね。
内部告発するエリートの実話かと思いきや、嘘の天才の横領の話。コミカルに描かれている。
ソダーバーグは、もともと実験的な映画を好む監督で、多くの観客が望むような分かりやすい作品とは正反対の作品を撮る、という嗜好がある監督だと思うのだけど、本作で彼が取った手法は、まさにそういった感じで、観客の気持ちをすかしつつ、主人公のマーク・ウィテカーという奇妙で、それでいて実に人間臭いキャラクターを飄々と描いている。
また、主演のマット・デイモンが体重を増やしてまで役作りをしているが、悪知恵は働くものの、でもネジが抜けている男を軽やかに演じていて、その上手さに舌を巻く。ということで、映画ファンなら必見。