「バーニング・ダウン
爆発都市」のラウ・チンワンが主演を務め、中国で大ヒットを記録したサスペンスアクション。かつて「神探」(神の捜査官)と呼ばれた元刑事が、香港を震撼させる連続殺人事件に挑む姿を描く。ジョニー・トーとワイ・カーファイが共同監督を務めた2007年製作の映画「MAD探偵 7人の容疑者」の後日談的作品で、本作ではカーファイ監督が単独でメガホンをとった。2023年・第41回香港電影金像奨で監督賞・主演男優賞・脚本賞・撮影賞を受賞。2022年・第35回東京国際映画祭でもガラ・セレクション部門で上映された。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2024」上映作品。
神探大戦評論(2)
香港の街で猟奇殺人事件が発生、“神探“(神の捜査官)という巨大な文字が残されていた。その頃かつて“神探”と呼ばれた刑事だったが深刻な精神障害により職を追われたリーは独自の捜査で殺人事件を追うがリーを嘲笑うかのように次から次へと殺人事件が発生、しかもそれらの事件の犠牲者にはある共通点があった。
これがもうびっくりするくらいメチャクチャな設定で、主人公のリーは死者、もしくはこれから死ぬ人の霊魂と対話が出来る霊能力者。よって誰よりも早く殺人現場に駆けつけるわけですけど、殺された人間の霊魂と会話しながら街中を走り回るわけですからそりゃ周りから見たら頭おかしい人間にしか見えない。この辺りは『Mr.Boo!ミスター・ブー』でも観ているかのようなデタラメぶりで何度も笑わせられますがいかんせん演じているラウ・チンワンの表情が真剣そのものなのでちっともギャグに見えません。そんなキテレツなオッサンとコンビを組むのは妊娠中の女性刑事イー・チョン。別に上官でもなんでもないリーの奇行に振り回されながら犯人を追う中で自らの閉ざされた過去にも向き合うことになるという怒涛の展開は猛烈にスピーディで脳裏に浮かぶ疑問符を片っ端から蹴り飛ばしていきます。冒頭の意味深なカットを巡るドラマに2重3重のミスリードが仕込んである複雑なプロットに翻弄された後のクライマックスには香港ノワールの芳醇な香りが立ち込めますがドラマはそこで終わらない。『セブン』と『シックス・センス』を足して13で割って圧力鍋で煮込んだみたいな凶悪極まりない猟奇サイキックコメディアクションスリラーはフルコースの中華料理みたいでお腹一杯です。
ちなみにイー・チョンを演じているのはかつて香港のアイドルユニット、ツインズの一人として活躍していたシャーリーン・チョイ。それももう20年くらい前の話なんですけど未だにめちゃくちゃキュートでビックリしました。
映画祭の上映作品終了後は、演劇の終演後の様に、内容の是非に関わらず、スタンディングオベーションするのと同じで、拍手するのがマナーなんですか?