「悲恋」のジャン・ドラノワが監督した一九四五年度作品で、「外人部隊(1933)」「我等の仲間」のシャルル・スパークが原作脚色し、台詞を書いている。主演は「フロウ氏の犯罪」のエドウィジュ・フィエールと「美しき青春」「ジェニイの家」のジャン・ルイ・バローで、「居酒屋(1933)」のリーヌ・ノロ、「熱風」のジャン・ヨンネル、ジャン・ヴァール、新人フランソワーズ・ド・リール、ラファエル・パルトニらが助演する。撮影は「悲恋」「ミモザ館」のロジェ・ユベエルが監督し、音楽は「美女と野獣」「悲恋」のジョルジュ・オーリックが作曲している。装置はセルジュ・ピメノフの担当。製作はミシェル・サフラとアンドレ・ポールヴェの協同。
しのび泣き評論(1)
1945年のフランスのメロドラマ映画
運命論的なのだが人物描写も丁寧だし
その頃の名優が演じているので 最後まで飽きさせない
ジャン=ルイ・バローが大成しない天才(?)ミシェルを演じ、周囲を混乱させ
感情の振幅も大きくて見ている方も疲れる
(でも女にはモテる)
芸術家肌みたいなものが その大成を阻害する…
みたいな話なんだろうか
悲劇なのだが アニエス役のフィエールが段々 美しくなってゆくのが救いみたいな処があった
フランス演劇界の大御所の実力かな
ジャン・ドラノアがメロドラマを多く発注されたのも〈女優を美しく撮ることが出来る〉ということでもあったかららしい
ラストでは(それでも)バローの演技に胸が締め付けられた
アニエスが茫然自失になってしまうのもよかった
恋した相手の悲しい末路を実感したことと
父親の予言を覆せなかった驚き、だろうか
日本には〈言霊〉という考え方もあるが
フランスではどうなんだろう