柚月裕子の小説を原作に、広島の架空都市を舞台に警察とやくざの攻防戦を過激に描いて評判を呼んだ、白石和彌監督による「孤狼の血」の続編。前作で新人刑事として登場した松坂桃李演じる日岡秀一を主人公に、3年後の呉原を舞台にした物語が完全オリジナルストーリーで展開する。3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害された、伝説のマル暴刑事・大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。権力を用い、裏の社会を取り仕切る日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩だった。悪魔のような上林によって、呉原の危うい秩序が崩れていく。日岡役を松坂、上林役を鈴木亮平が演じ、吉田鋼太郎、村上虹郎、西野七瀬、中村梅雀、滝藤賢一、中村獅童、斎藤工らが脇を固める。前作に続き、白石和彌監督がメガホンを取った。
孤狼の血 LEVEL2評論(20)
復讐の序章。穏やかな空気が流れるピアノ教室に現れた男は、容赦なく女の両目に親指をぶち込む。問答無用の粛正、ただならぬ空気の先に女の兄である看守の写真が浮かび上がる。
広島を支配した親分の血筋を継ぐ上林は、時代は変わっただとか、今はビジネスの時代だなどとほざく上層部が気に入らない。復讐と復権を果たすために、誰も信じないことで自らを奮い立たせていく。
『虎狼の血』をLEVEL2に引き上げ、前作とは異なるテンションを付加するためには、凶暴で手のつけられない男が必要だった。鬼神、上林を託されたのは鈴木亮平だ。
優等生的な役柄が多かった俳優が余計な負荷を振り払い、髪を短く刈り込み、まるで仁王のような佇まいで他人を見下ろす。鍛えられた身体に刻まれた背中の刺青は入所によって途中で止まったまま。その空白を埋めるかのように男は性急に動く。鈴木は「最も凶暴な男」のひとりとして東映ヤクザ映画史に刻まれる上林を激烈に演じきる。
猟奇殺人事件が発端となり、捜査本部に招集された日岡(松坂桃李)と復讐鬼と化した上林が交錯していく。前作に続いて登場する毒気の強いキャラクターたちも健在だ。
そしてもうひとつ。この映画を観て俄然食欲がわいた。村上虹郎が演じる幸太はことあるごとに姉の元を訪れ「腹が減った、何か食わせてくれ」と焼きそばを喰らう。新たにコンビを組む瀬島(中村梅雀)は「相棒なんだからメシを食おう」と誘う。渋々応じた日岡の前にはビールと家庭料理が並び、焼酎をしこたま飲んだ後には広島名物「たこ飯」が振る舞われる。
活力は喰らうことで生まれることを監督は知っている。この作品は食欲をかき立てる力を持つ。
マル暴の役所広司演じるガミさん亡きあとの、日岡の変わりようがどうなったかなと思ったが、
優男だったスパイの頃とは180度変わり、ガミさんを上回るマル暴刑事の日岡がいて、とても良かった。
物語のカギを握る上林役の鈴木亮平も、本物⁉︎のそっち側の人の様で、映画の中の人で良かったなぁと思った。
本当の本物さん達はもっと怖いのだろうが💦
映画よりレベル2以上だよなぁきっと
3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれて殺害された、伝説のマル暴刑事・大上の跡を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡。権力を用い、裏の社会を取り仕切る日岡に立ちはだかったのは、上林組組長・上林成浩(鈴木亮平)だった。こんなにも狂気をはらんだ役を演じ切った鈴木にとっては、新境地開拓といって良いのではないだろうか。
また個人的に村上虹郎、西野七瀬、そして中村梅雀の存在感こそが今作を一段上のグレードへと連れて行ったと断言しても良いほどに説得力のある演技を披露した。最後に、これは「仁義なき戦い」でいうところの「広島死闘篇」といえる。さらなる続編へと繋がる道を用意している点も上手い。
3回鑑賞できた。
1回だけでは気づかないことが、回を重ねていく毎に見えていき感じ方も変化していく。
初回は、上林(鈴木亮平)の凶暴さに目を奪われた。
2回目は、それぞれの背景に涙が溢れた。
3回目は、沢山の命が奪われたのは、やっぱり上林の自己中によるものだという気がしている。
上林以外は、自分の気持ちに何とか折り合いをつけているのに、上林は自分の思いのみで動いている気がした。結局は自分の存在意義を否定して、自分の存在を消してくれる相手を探していたんだろうと思った。
だからと言って、その渦に沢山の人を巻き込んでいくのは許せない。
今作は日岡の負け戦さと監督は言っているけれど…?
確かに、チンタの命や真緒を犯罪者にした事は負けかも。
高坂によって真実に気付いた日岡だけど、日岡vs上林はあの結末しかないだろうなぁ。
ガミさんだったら…
日岡は犬なのか狼なのか。
次作は「狂犬の眼」?
是非是非、日岡の成長を見たいと思う。
ひとりでも戦うという暗示なのか…