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ケス評論(6)
しかし、ひどいなぁ。
校長も家族も学校も社会も本当に「ひでぇ!」の一言だけど、ハヤブサ(鷹じゃないんだね)を訓練する姿には頑張れ!と言いたくなる。
唯一話を聞いてくれた教師がいてよかったよ。
まぁ、割と突拍子もなく展開するので、ついていけないところもあったけど。
少年はその後どんな人生を送ったんだろうか。
劇中も実生活でも。
監督、最近も社会に対する怒りを作品にぶつけてらっしゃるけど、相当辛い思いをなさったのか?
南ヨークシャーの炭鉱町に住むビリーキャスパーは友達がいなく勉強も好きじゃなく、お兄さんともうまくいかない. 校長やサッカーコーチから体罰を受け、クラスの仲間からはいじめられ。この中で、彼は友達を見つける。事実である友達(ケスという)との話が、皆を感心させる。しかし、、
問題のある家庭、学校での体罰、いじめのなかで、彼はなぜこんなに強くなれるのだろう。
体操の服をビリーだけ持っていない。「どうせ卒業するのだから服は要らない」と答えるが、卒業までは4年ある・・・
年齢ごまかしたり、体育の先生に逆らったり、純粋な少年なのだが平気でウソをつく。淡々と進むストーリーの中にも同級生と先生のやりとりが非常に面白い。トリュフォーのように少年の心情にまで深く切りこまずに、幼い少年が就職しなければならない時代背景や寒々とした雰囲気が妙な気分にさせるテクニック。3人の教師それぞれがビリー少年に対する接し方が全く違うところも面白い。
鷹の飼育について教室で発表させたおかげで、ビリーは鼻高々にもなり、自分のやってきたことに自信を持ったのであろう。この先生もなかなかのものだ。
就職のための面談から現実に戻り、やがて鷹のケスがいなくなってしまうことの焦燥感と虚無感。兄の金を使いこんでしまったことから起こる悲劇。兄貴の残酷さにも怒りを覚えるが、それよりも就職しなければならない虚しさのほうが重くのしかかる。ペットなんていつかは死の悲しみを味わわなければならないし、現実に戻されて大人の道を進むこと、この冷たさのほうが記憶に残るかもしれない・・・とはいえ、次男坊の主人公ってもともと感情移入しにくい。
ケスが自然の中を飛ぶ姿は本当に美しかった。
ビリーのケスはペットではないし、飼い慣らそうとも思っていない、ただ飛ぶ姿を見させて貰っているのだという台詞は考えさせられるものがあった。
後半あたり、ビリーが教室で皆の前でケスについて話すあたりから物語に引き込まれた。ケスについて話すときには口数が多くなるビリーが良い。
終わりがあまりにも唐突で、また現実を突き付けられるようで辛かった。
ケスに興味を持ち、ビリーを気にかけてくれる先生がいたことが見ている側として救いだった。
自分も、人は裏切るから信用出来ず、飼っている猫だけが大事だから、主人公の男の子の気持ちは理解できる。
キャスパー君の通う学校の先生たちは今だったら、Twitterに映像拡散されそうな理不尽な扱いを子供相手にごく普通に行う。
「昔は良かった」って言う人が居るけれど、「昔」ってこういう「理不尽」って今以上に野放しだから、今みたいに過剰に神経質なのも、どうかと思うけれど。
キャスパー君は、家族関係も酷いしでも、新聞配達をやったり中々の「苦子供」(苦学生って年ですらない)
苛酷な環境下で、孤独な心を通い合わせる唯一の相手が鳥の「ケス」
ネタばれになるから無理だけれど、この「ケス」が終盤酷い扱いを。
しかし「ケスと少年のシーン」は映画的にとても、良かった。
孤独な心と過酷な環境、時代と地域が違っても人の心の苦しみは変わらない。