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02月09日 台灣上映
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ヴェラ・ドレイク評論(2)
人を手助けする事に生き甲斐を感じているヴェラが自分の犯して来た罪を初めて自覚した時にそれまで欠かす事のなかった鼻歌が消えた。
奥手の娘はただ悲しみ、息子はなじり続け、夫はひたすらヴェラを優しく受け止めるだけしかなかった。
警察にはヴェラの本当の心が分かるので対応は優しいが‘罪は罪’
映画はこの取調べの場面でのヴェラの表情と夫の戸惑い、刑事の本心では何とかしてあげたいとの感情を見事なカメラアングルや照明のコントラストで表現していて圧巻だった。
一見裁判の場面とは掛け離れて見えるクリスマスを祝うシーンはまるで家族裁判の様でもある。
そして唐突に見えるラストだが果たして今後もヴェラは罪を犯してしまうのか?映画は謎のサインを最後に残して終わります。
マイク・リーは終戦直後とゆう時代背景を通してお金や避妊用具、そして男のエゴ等でどうしても堕胎をしなければならなかった当時の女の人達の現実と、反面抜け道のやり方を対比させながら当時の現実を見つめて観客に問題定義を投げかけます。
堪能しました。
イギリスで中絶が合法化したのが、1967年。私が生まれるわずか7年前のこと。まず、この事自体が信じ難いことですが、更にこの時代に中絶ほう助で禁固刑になることに、絶句しました。
この作品は当たり前ながら、中絶の是非を問う作品ではありません。国家の是非を問う作品となっています。
主人公のヴェラは、面倒見が良くお人好しな優しい人物。彼女は、望まない妊娠をした女性に対して、困っているから、助けたかっただけです。ただ、それだけです。
善意でしたことであっても、法という名の下でヴェラは裁かれ傷つきます。中絶も他人から言われる以上に、当人は十分傷つきます。男性達は国家の名の下に行われる戦争によって傷を受けています。
マイク・リーは、傷ついた彼らに寄り添う様に、時には冗談を時には本音を語らせ、権力を批判します。
「不公平だよ。金持ちならいい。食べ物が買えなきゃ子供を育てられない」
そして、ラストシーン。
中絶をほう助した罪で服役している再犯の女性達は、ヴェラに向かってすぐに出所できるとも、すぐに時代が変わるとも言える言葉を投げかけます。
「大丈夫よ、すぐよ」
フェミニストのメタファーともとれる再犯の女性達とヴェラの様な普通の女性が、「信条」ではなく「心情」が一致しているということを描いた瞬間。マイク・リーの懐深すぎます。本当どうなってるんでしょう。やられました。
彼女達の言葉から17年後、中絶はイギリスで合法化されます。