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39 刑法第三十九条評論(7)
特に精神医学は非科学的で、裁判は真実を明かすではなくパワーバランスだけです。
更生をするという目的で刑務所に入っても、その猟奇的な部分が治るとは思えない。その上で、殺人などの悲惨な事件を起こした犯人を中途半端な状態で世の中に戻してしまって良いのか。
被害者やその家族は、きちんと裁かれていないその状況では、気持ちの持って行き場がなくなってしまうのかもしれない。
昔、府立医大の精神科教室の助教授が、精神科の診断及び治療は占いのようなものだと。当たる事もあれば、外れる事もある、いずれにしろ根拠がないのだと。現在のところも、残念ながら進歩していない。
根拠のない薬物治療で犠牲者は多数
次は、裁判。裁判官は常識が無く、人員不足で多忙なため、まともな人間関係が築けず、本人の偏見による予断に満ちた事実認定が多発している。
作品としては、ストーリーに無理があるが、真実を炙り出すには、この方法しかないと思はせるものがある。
鈴木京香、堤真一、岸部一徳、やるやると見ていたが、ここまで役になりきるとは。
樹木希林は、ズルくて嘘つきなところは、地が出てるとゆう事で、演技ではない。
監督は、要らない描写を間に入れて、セリフのシーンが短くなって良くない組み方だ。
カメラワークも意味なく揺らしたりして、独り善がりだ。
しかし、破綻のない筋書きで、演技も素晴らしい。
サスペンス、社会物好きな人は必ず見るべきだろう。
多重人格障害は、実在する病気だ。
多くは子供時代の虐待、特に性的虐待で発症し、辛い記憶を複数の人格に切り分けて本能的に自己防衛をした結果なのだという。
本作の結論は、精神障害があれば刑事責任を問わないという規定の是非について問う、という内容に落ち着いてしまった。
しかし、人の心が持つ奥深さ、不思議さをこの作品は良く描いていると思う。
妹を殺された日から、彼は精神的外傷を負っていた。39条が、その精神状態の異常さに拍車をかけたのは間違いない。
彼は39条の理不尽さを説きながら、自身も39条を利用するかのように振る舞った。
彼の行為も充分異常である。
その彼に、39条の理不尽さを代弁させるというパラドクスと見ると、なんと深い話なのだろうと思った。
精神鑑定師が2人とも精神薄弱に見えるのも興味深い。
結局は主観に過ぎない精神鑑定を、世間的に見ればかなり精神の弱そうな人が行なっていることで、精神鑑定の不確実を強調しようとしたと見るべきか?
いや、私はこのように見たい。結局は法の裁きだって、裁く側の人間の過去をも反映した、ものすごく主観的なものに過ぎないのではないか、という問題提起なのだと。
映画を娯楽として捉えるとこのテーマを扱うのは難しすぎるが、娯楽を超えたものとして観るべきかな。全体的に抑えたトーンで粛々と進むが、岸部一徳の刑事がなんとも言えずカッコよかった。希林さんの弁護士ってのも新鮮。