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日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声(1950)評論(1)
わだつみとは海の神との意味であるが、本作の内容は海に沈んで行った英霊を扱うものではなく
1944年のインパール作戦の惨状を学徒出陣した学生の目を通した形で映画としたもの
インパール作戦は太平洋戦争の中でも最も悲惨で日本軍の駄目で悪い部分をグツグツと煮詰めたような戦いで、本作で描かれた状況は序の口と言うほどのもので幾らでも調べればその実情を知ることができる
前途ある学生がこのような無謀で無意味な戦いに投げ込まれた悲劇を伝えるものだ
当時の大学進学率は一桁であったから、学生とは本当に将来の日本を背負うべきエリート達であったのだ
このような悲劇は繰り返されてはならない
そのメッセージはあくまでも正しい
本作は原作の学生達の手記に基づくものでそれ以上でもそれ以下でもない
しかし本作はこのメッセージ性に乗っかっていろいろな勢力が利用するものとなり、映画そのものまでそのような勢力の色がついているように見られ勝ちだ
しかし全くそうではない
素直にに観るべきだ
ただ映画としてはドラマ性などはなく、盛り上がりもそうあるわけでもないのは事実だ
その様な勢力に利用されたことによって本作の価値や意義は却って冒涜されているのではないかとすら思うのだ
わだつみの会の主導権を巡るいざこざ、わだつみの像のいきさつ、荒神橋事件
戦没学生の慰霊などそっちのけだ
戦没した学生達も戦争で悲惨に死ぬことは古今東西常にあることとして諦めることもできたかもしれない
しかし、戦後のこの平和勢力と呼ばれる諸勢力同士の抗争の方がこのインパール作戦よりも悲惨で希望がないと草葉の陰で嘆いていることと思う
自分たちの死持って記録されたことがまるで将棋の玉かトロフィーのように扱われているのだ