若い陸軍将校が妻を強姦した男を射殺するという事件を中心にしたロバート・トレイヴァーのベスト・セラー小説「殺人の解剖学」の映画化。脚本は「追撃機」のウェンデル・メイス、監督は「悲しみよこんにちは」のオットー・プレミンジャー、撮影を「手錠のままの脱獄」のサム・リーヴィットが担当している。出演は「めまい」のジェームズ・スチュアート、「群集の中の一つの顔」のリー・レミック、「モンテカルロ物語」のアーサー・オコンネル、ベン・ギャザラ、イヴ・アーデンら。他に音楽担当者デューク・エリントンや実在の裁判官なども1役買っている。製作オットー・プレミンジャー。
或る殺人(1959)評論(1)
そんな彼の元へローラ・マニオンという女性から電話で依頼があるのだが、彼は湖で釣り三昧だったために事件すら知らない。パーネルからとにかく受けろと忠言され引き受けた内容は、ローラをレイプした事実を知らされた夫マニオン中尉がその犯人クウィルを銃殺したという事件だった。
当初の問題は刑を軽減するか、精神鑑定に持ち込んで無罪を主張するかという点だったが、軍医の精神鑑定で「抗えない衝動」だと認定されたため、無罪を主張する方針になった。さらに、ローラが本当にレイプされたのかどうかという争点も加わり、ビーグラーとしては検察側の主張をあやふやなものにする作戦に出た。こうして検事ダンサー(ジョージ・C・スコット)との対決が始まったのだ。とにかく、この二人の舌戦は凄いです!
サンダーベイ・ホテルの支配人メアリー・ピラントについての証言はあるものの、二転三転したり、どんでん返しを期待するような作品ではなく、むしろ弁護士と検事の駆け引きを楽しむ映画でした。『アラバマ物語』(1962)のような社会派作品でもないし、コミカルな演出もあるし、どちらかといえば魔性の女ローラの真実はいかに!?的なサスペンス部分にも惹かれてしまう内容でもありました。かなりの長尺のため、もしかするとレイプそのものも無くて、誰かが仕組んだ計画的な殺人だったのか?などとも頭の中が飛んでいったりします・・・
デューク・エリントンが音楽を担当しているし、スチュワートもジャズピアノを嗜んでいるし、誰かと一緒に酒を飲みながら「あーだ、こーだ」と言って楽しむのも良いかもしれません。