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マンディンゴ評論(5)
①題材がショッキングだし公開当時はかなり衝撃作扱いされたが、今回観て画面が思ったより明るく映画のムードも牧歌的なのにちょっとビックリ。インパクトも期待したほどではなかった。公開から45年も経っているので、その間にアフリカ系アメリカ人への差別も含めいろんな人種差別映画を観てきたせいかな。②もう少しハモンドとミードとの関係性をじっくり描いた方がクライマックスの劇的緊張や悲劇性が高まったと思うし(ミード役が素人なのでそこまでの芝居は無理と思ったかな?)、ブランチの妊娠⇒出産⇒ハモンドの逆上⇒ブランチ殺し⇒ミード殺し、の一連の出来事の描きかたが駆け足で今一つ盛り上がりに欠けたのは脚色のせいでもあるし、演出も平板に流れてしまって衝撃度が今一つの感じは否めない。③黒人は獣だと言うなら黒人とセックスするのは獣姦なんじゃない?と思うが、もうその時点でモラル崩壊してたわけですね。ハモンドも処女性に拘ったり黒人同士の近親相姦には確かに初め難色を示したが結局認めながら、妻の近親相姦には嫌悪を示したし、黒人
に優しく接しする様はペッ
トを愛玩するようなもので一皮剥けば面子やプライドが優先する南部白人の殻の中にいただけだ。④スーザン・ジョージは当時こんな白人アバズレ女を演じさせれはピカ一でしたね。⑤こんな風に主人やそれに類する白人に孕まされて生まれ売られた子供達の多くが、現在のアフリカンアメリカ人の先祖に多いことに触れて私のコメントを、閉じよう。
お仕置き、お仕置き・・・と鞭打つシーンはこれまで何度も映像化されてはいるが、主人には逆らえないために性処理、子作りまでやっていたとは・・・しかし、これも現実。血統書付きマンディンゴは高く売れるため、量産したいマックスウェル。奴隷市場に赴いたハモンドは早速ミード(ケン・ノートン)という体格のよい男をゲットする。そして、政略結婚ではあるが、従妹のブランチと結婚。それがまた初夜で処女じゃないことがわかり激怒するハモンド。
現代では多くなっているが、黒人と白人のセックス描写なんてご法度の時代だった1975年。そのために長い間お蔵入りになったというエピソードもあった。さすがに兄妹のセックス描写こそなかったが、彼ら南部のモラルとしては許容範囲だったのか?
ストーリーそのものよりも、黒人奴隷に対する仕打ちが酷すぎてトラウマになりそうな作品でした。しかも最後には・・・石川五右衛門じゃないんだから、底板を置いてください。じゃなくても死ぬか・・・
間違いなくフライシャー監督は“正解の一例”見せてくれたよ。黒人奴隷の悲惨さを陰鬱BGMじゃなくて、敢えてのどかなBGMで表現させる巧みな演出。巧いし若干嫉妬したよ。ここまで醜悪な黒人奴隷の片鱗を“悲惨”で売らないで、“普通の光景”と伝える勇気、今の日本映画にないから…。ウィキにあった“ウェディングケーキのように美しくロマンチック。でも近寄ってよく見ると腐ってウジだらけなケーキ(監督談)”の意図がちゃんと伝わったし、タランティーノに感謝したよ。ジャンゴなければ知らなかったし。
それにミードやエレンにハモンド…この三人の関係もスゴい。最初のよくある主従関係が徐々に確かな絆に変わって、逆に悲劇を香らせていく…。そこを迷わず描けるところが余計に映画の価値高めたね…。最初ハモンド見たときなんか、クソ生意気なチキン野郎で最低だと思ってたのに(親父から受けた鞭打ちを最後まで直視できない上に他の奴が入った途端にガキみたいに喚く始末)、エレンと出会って価値観揺らいで、ミードを奴隷と見れない姿。たった2時間の間だけで、なんで描けたのかが不思議。
つーか、奥さん初体験が近親相姦ってのはちょっと…。黒人を“獣”扱いのうえ、病を診る医者獣医だし(それも当たり前のように)、これじゃどっちが“獣”なのか分かったもんじゃないね(だけどこれを勧善懲悪で終えないところが冷酷で良い)。正直初めての性行為場面で既に胸糞悪しだが、タランティーノの「ジャンゴ」以上とは夢にも思わなかったよ(タランティーノがインスピレーションを受ける理由も納得できるし、いかにジャンゴでどこを入れるか、入れられないかを分かっていたかも)…。
ここまで悲劇を積み重ねてラストでそれが一気に頂点。自ら招いた種とは言え、これも悲劇と言うしかない。でもぬるくて気分の悪い偽善映画を眺めるよりも、後味悪しでも見るべき価値がある映画を眺めていたい。これはそんな希少な映画。
ベストに入れる名作です!
映画の時代背景19世紀から大夫経っている現代においても、差別は根強く残っている。この映画で根本を見た気がする。人種差別だけでなく、男尊女卑も描かれている。アフリカから奴隷として連れてくるのが難しくなると交配させ育てて売る。。家畜と一緒。人として認めていない。奴隷の医者が獣医というのが、まさにその証拠。黒人少年の腹に足を載せるとリウマチが少年にうつり、治るということを信じる親父は最後の最後まで胸糞悪いが、特に南部では多くの白人がそうだったのだろう。しかし、息子は奴隷の一人である、黒人女性を愛するうちに次第に心が変わっていく。屈強な体格をしたマンディンゴと呼ばれる種族の奴隷を買い、殺し合いをさせ、金を掛けるのはローマ時代のスパルタカスそのもの。闘い、傷付いた奴隷を大事に扱うなど、気遣いを見せるようになったかと思ったが、結局悲しい結末を迎えることになる。妻がかなりの性悪女。夫である息子が自分に構わず、黒人女性ばかり可愛がることから、腹いせに奴隷に自分を抱かせてといて、黒人の子が生まれるとは思わなかったのだろうか。この時代、女性は婚前交渉は認められず、処女でないと知られてしまってから、完全に息子から相手にされないのも確かに可哀想ではあるのだが。ラスト、命令に従うしかなかった奴隷は息子に釜茹で殺されるのは残酷だし、やっぱり息子も性根は変わらなかった。妻が娶られた気持ちもあったと思うが、主人を信じてきた、奴隷の白人はやっぱり白人でしかなかったと言うのが悲しい。
序盤。
黒人に対する人権を無視したよつな言動に嫌な気分にはなりますが、ジャンゴほどのショッキングなシーンがなく、白人が優しさを見せたりお互い信頼関係を築いたり、で拍子抜けしました。
。。のですが。。
進むにつれ、みぞおちの当たりに重い鉛のようなものがどんどん溜まっていき、鑑賞後はドーンと気分が重くなりました。
ジャンゴ同様、見た目ショッキングなシーンはあるにはありますが、むしろそれ以外の、「優しさ」、「信頼関係」が見えるところにこの映画の重さがあるように思います。
ジャンゴのそれは過去の歴史として観られたのですが、マンディンゴは日常の延長線上に奴隷制度があることを突き付けられました。
奴隷制度、つまり黒人は人間か否か、という価値観に対して息子は揺らいでいるように見えたのですが、そうではなく、人間ではない、ということは前提とした上で粗暴に扱うか否か、というような別の価値観で揺らいでいるように見えました。
父親と比べ濃淡はあるものの価値観のベクトルとしては同じく「黒人は人間ではない」
自分以外の人間を見下したり軽く扱ったり、こうあるべきと決めつけたりすることがあるか、と言い換えると、自分にもその「差別意識」はあります。
女だから、子供なのに、新人のくせに、そんな歳で、などその片鱗はそこかしこにあるように思います。
この映画のような行動をしてしまう可能性が自分にもある、という前提でそのベクトルは正しいのか、と問うこと、過去の歴史の勉強ではなく、同じような事を起こさないようにすることこそが、この映画の観た価値となるのではないか、と思います。