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スペシャリスト 自覚なき殺戮者評論(6)
アルゼンチンにおいて「暗殺」という選択肢もあったであろうなかで、あえて裁判というかたちにしたのは、「市中引き回しの上、打ち首獄門」の効果を狙ってのことか。
アイヒマンに非がないとは決して言わない。彼の犯した罪は重く、「指示を受けただけ」「自分には責任がなかった」との意見で彼個人の罪を逃れることはできない。最終的には極刑もやむなしと思う。
しかし、裁判の運営自体はとてもいただけない内容だ。結論ありきで、彼が直接関与していないことも全て彼の責任として罪を挙げ続ける。裁判官は公平なスタンスをとっておらず、まるで検察官がふたりいるような姿勢。弁護人は沈黙し全く機能せず。
殺人の被告人もきちんと公平な裁判を受ける権利があることをあらためて考えさせられる内容。
また、アイヒマン裁判の状況を知るための貴重な記録映画。
1961年5月31日に死刑制度の無い国イスラエルでの死刑が執行された。
収容所の所長に同情を漏らす所もあったが、終始自分が手を下したのではないと言う。
こういう人は組織の中では重宝される。
個人として、生きている?
まずは、そういう状況を容易に作り出す”戦争”に突入させないようにしないとね。
あくまでも内容に興味を示しただけ。
ただ、現代の俳優が演技で表現したのではなく文字どうり記録映像なので実際の様子を知ることができるのはいいと思った。
内容はエルサレムの裁判の様子をそのまま翻訳しただけ。(ナレーションも無い)
自分は鑑賞する前にアイヒマンの来歴を少し調べていたので理解しやすかったが、本編が第七回公判から突然始まったこともあり、これは予習しておいて良かったと…
正直な感想は、アイヒマンの人物像があまり掴めなかった。腑に落ちないという事。
彼は自分は悲観主義だと自称していたがその時の傍聴席からの反応を見ていると果たしてどうなのか…
また、アイヒマンは終始「命令だったから…」とか、「従順なんだ」とか、どうも要領を得ない受け答えばかりで、邦題にもあるように自覚が無いように見えた。
一方で「私は上官の命令に従うことに精神的な満足感を得ている。」「もし「お前の父親ば裏切り者だ」と言われ殺すように命令されても従うだろう」とか、「私の罪は従順だったことだ」とか、如何にもな発言があるようだが、どうにも逆らったら怖いだけなんじゃ無いかと…
現に「軍人である以上は命令に従うことが義務である。当然、逆らって自殺するも良し」とか言ってたし。
裁判の最後の方では内容の核に触れる質問も増えてきた。
本当に命令されただけなのか?
命令を断ることもできたのでは?
自分の意思では無い?
結局最後はこれらに頷いた訳で、このあと処刑されるのかと。
これは映画とはあまり関係ないが、アイヒマンは処刑される直前、言い残すことはないか問われたとき、
「ユダヤ教徒になりたい。これであと1人ユダヤ人を殺せる。」と言う逸話も、あるそう。