スペインの名匠ペドロ・アルモドバルがプロデューサーを務めたブラックコメディ。2014年・第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、第87回アカデミー賞ではアルゼンチン映画として外国語映画賞にもノミネートされた。人生において決して押してはならないスイッチを押してしまったがために、絶望的な不運の連鎖に巻き込まれていく男女6人のエピソードを姿を描いた。監督はこれが長編映画3作目となるアルゼンチンの新鋭ダミアン・ジフロン。出演は、アカデミー外国語映画賞受賞作「瞳の奥の秘密」のリカルド・ダリンほか。
人生スイッチ評論(20)
それぞれのシュチュエーションを観て感情移入するとその怒りのパワーが洗練されたスタイルでひしひし伝わる作品。
でも最後は理屈でなく、それを上回る上品に言えば愛、下品に言えば欲望で上回るというエンディングも納得⁈
いわゆるクレイマーとおぼしきお客が、店員を怒鳴りつける光景を
思い出してしまった。一度怒りに火がつくともう誰も止められない。
容赦のないブラックな展開に評価は分かれそうな作品だけど個人的
には面白かった。普通ならその怒りを爆発させないと思うからこそ、
衝撃の結末が活きる。しかし第一話の巧さに導入部で惹き込まれた。
ブラックコメディと言うより、ブラックドラマ。
救いのないショートストーリーが淡々と進みます。
ちょっと滅入ってしまって、実は最後まで観ていません。
≪感想≫
・第1話;飛行機に乗り合わせた乗客全員が、
ある一人の人物と関係性があること、
怨恨の念を持たれるような過去を持つことに
気付き、最後は飛行機が墜落。
☆4.0;飛行機に乗っている人が次々とある人物を
知っていると
主張していくシーンを見て、
偶然が必然であることにじわじわと気づかされ、
平穏、偶然の会話から、
一気に恐怖へと移り変わっていく感じがした。
・第2話;店にやってきた客は、女店員の親を
殺したマフィアで、それに気づいた
女店員は店長に話すと、殺害のために毒を盛り、
最後はナイフで客を××。
☆3.0;店長が殺害してしまい、逮捕されるだけで、
このストーリーに関しては
あまり印象がなかった。
アカデミーを遠ざけた要因か?と思った。
・第3話;あおり・追い越した主人公が、
タイヤのパンクにより
砂漠という無法地帯で立往生。
追い越しされた運転手が車を壊す、
バンパーで○○をする、等の嫌がらせをすると、
怒った主人公は相手の車を
押し出して谷に落下。
その後上ってきた運転手と
血みどろの殺し合いを始め、
最後は炎上し仲良死。
☆5.0;たかが、されどあおりによって、
人を怒らしてしまった主人公が悪い訳だが、
ここまで復讐されてしまうとは、
と驚愕させられた。
人は怒り狂うと何をするか分からない、
と主張された気がする。
また、武器も持たずに人間同士の信頼のみで、
警察も直ぐには来れないような
無法地帯にいることの恐怖を感じた。
仕返しをするとすぐに自分の身に
帰ってくるような失敗が起きる、
という繰り返しが起きる展開で、
まるで因果応報の応酬のようだと感じ、
人間の滑稽さを主張された気がした。
スピルバーグの『激突』を思わせられた。
・第4話;建物解体業の男が、違反駐車で
レッカー移動・罰金を取られたが、
自分の正を主張した結果、妻との離婚、
娘との面会権はく奪、失職といった
災難に見舞われ、
自分の正しさを主張する為に
レッカーの会社を爆破。
ところが、世間で彼が
ヒーローのように養護され、
娘・妻との再会も果たした。
☆4.0;失うものがない人間は無敵状態になると
まさに主張されたような気がした。
また、主人公の行動は‘テロリズム’とも
揶揄される訳だが、それがある視点
からは‘ヒーロー’として
あがめられてしまう
という、皮肉を感じたと共に、
正しさとは何か、考えさせられた。
・第5話;妊婦を引き殺してしまった息子を救うために、
知人を殺害者として
細工しようと考えることが発端となり、
弁護士、知人、父親、刑事、
皆が見返りのお金を巡って言い争いをする。
結果的に知人が殺人者として
外に出ると群衆にトンカチで一発殴られた
瞬間に物語は終結。
☆4.0;利己主義のために愚かな言い争いを
始めた彼らは結果どうなるだろう、と
考えていた矢先に、
群衆にカツンとたたかれるシーンを見て、
これはまず、細工とか考えてる時点で
こうなってしかるべくなったものだと感じた。
利己主義に陥った人間たちの因果応報な
末路を主張された気がした。
・第6話;結婚式。新郎の浮気と結婚式に来ている
浮気相手に新婦が気付いたことが発端。
屋上から飛び降りようとした新婦は、
式場の従業員になだめられると、
接吻をかわし行為を始める。
新郎が屋上に着くと、新婦に
「財産はすべて私のもの」
「ほかの男と寝てやる」と
脅されその場で嘔吐。
式場に戻った新婦は、
浮気相手を投げ飛ばして血まみれにさせる。
泣き崩れる義母と新郎を撮影した。
やがて新郎も狂い、ナイフを振りかざすなど
奇行をする。すると、
ふたりは見つめ合い、行為を始める。
☆5.0;結婚式が滅茶苦茶になったことで、
新郎新婦の本性が語られ、結果として、
本心で愛し合っていることに
気付くことができた気がした。
人間の本性がさらけ出されることによって、
はじめて偽りのない
愛に気付くことができるという主張を感じた。
≪まとめ≫
第1~6話にて、下記感想を得た。
極限状態に陥った時、人間の脅威、恐怖、愛の
本性が暴かれ、そして何が起こるのか?
考えさせられた。
・第1話;偶然から必然へと変わっていく
脅威と恐怖をじわじわと感じた。
・第2話;あまり印象がなくアカデミー賞を
遠ざけた要因と感じた。
・第3話;人間を怒らせると何が起こるか
分からない恐怖、
無法地帯にいることの恐怖、
怒りに飲まれた人間の滑稽さを感じた。
・第4話;‘テロリズム’がある視点から
‘ヒーロー’と見られてしまう
皮肉を感じ、‘正しさ’を考えさせられた。
・第5話;利己主義に陥った人間の滑稽で
因果応報な末路に気付かされた。
・第6話;人間の本性がさらけ出されることに
よって、はじめて偽りのない
愛に気付くことができるという主張を感じた。