「エゴイスト」「レジェンド&バタフライ」の宮沢氷魚が主演を務め、発達障がいを持つ画家の青年と女性編集者の恋の行方を描いた恋愛映画。出版社に務める雑誌編集者・小向春は取材のため、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透と出会う。発達障がいを持つ屋内は自分の思ったことをストレートに口にし、感情を隠さず嘘もつけない。人の顔色ばかり見て生きてきた春にとって、そんな彼の姿は新鮮で魅力的に見えた。恋人に怪しまれながらも屋内にひかれていく春だったが、相手の気持ちを汲み取ることが苦手な彼に振り回され、思い悩む。屋内との恋を通して変わっていくヒロイン・春役に「初恋」「ファンシー」の小西桜子。出版社で漫画編集者として働きながら自主映画を制作してきた葛里華が長編初監督・脚本を手がけた。
はざまに生きる、春評論(1)
宮沢氷魚を主人公に据えた企画でグランプリを取り、製作された映画だそうです。
知らんかった。
芸能事務所のレプロエンタテインメントが主催。他にも5名の所属俳優に対して募集をかけて、それぞれグランプリを取った企画が映画化されるので、全部で6本!
すごいですよね。お金あるな〜!
いや、待てよ。
主演のオファーを取りに行くより、よっぽど合理的か。
出演料だって自社だから抑えられるだろうし。
うまくいけば代表作になるかも!?
何より若手監督とのタッグはお互い良い刺激になっていい事づくめ!
今後の作品にも注目したいです。
「発達障害」の画家を氷魚くんが透明感たっぷりに演じているので、いろんなことを知るきっかけになる映画です。
確か私がサヴァン症候群の事を初めて知ったのも『レインマン』だった気がします。
映画は1人の人物の内面に深く入り込めるので、情報や知識としてではなく、もっと能動的にいろんな事を知るきっかけになると感じています。「頭ではなく心で知る」という表現がピッタリかも。
障がいやハンディキャップの描き方は非常に難しい部分があると思いますが(個人的には必要以上に聖人化するのとかが苦手)
それでもなお、賛否両論を覚悟のうえで、伝えたいことや知ってほしいことの為に果敢に挑戦した作品だと感じました。
発達障害の特徴の一つに「強いこだわり」があるそうですが、自分のこだわりについてや、していは自分自身について、もっと知りたいと思ってもらえる心地よさ。
それは恋愛感情に限らず、自分という存在と向き合ってくれる心地よさだと感じました。
春は透のことを「もっと知りたい」と感じますが、実は春は透の中に春自身のこだわりや生きづらさの延長線上にある解放を感じ取って、そこに惹かれたのではないかと思いました。
透は、理屈ではなく「こだわり」自体を肯定してくれる存在であり、春は自分をわかってもらえる心地よさに、更に惹かれていったのではないかしら。
透は春によって「知りたいと思ってもらえる心地よさ」を初めて感じますが、春もまた透から「知りたいと思ってもらえる心地よさ」を感じていたと思います。
だいたい、障がい者か否かなんて、制度的なカテゴライズにすぎない。
テストの数値や生活状況などを踏まえた一定の判断基準の結果、手帳がもらえたりもらえなかったりするだけで、人間の特性はもっとグラデーション。
ややその傾向があるが、基準とされるレベルではない人を「グレーゾーン」や「はざま」と呼ぶそうです。
春は「発達障害であること」や「障がい者であること」に過剰に反応しますが、それは鏡返しに自分の中の偏見の表れだと感じました。
決して「発達障害」という未知の人類がいるのではなく、グラデーションの強弱に違いがあるだけ。
『はざまに生きる、春』すごいタイトルです。