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ウーマン・トーキング 私たちの選択評論(8)
このコミュニティは一体どこなのか。時代は遠い過去か、あるいは近未来か。全てを曖昧にしたまま(映画の中盤で時代は明かされるが)、映画は濃密な「討論劇」へと足早に私たちを引き連れてゆく。
どうやらこの村の男たちによって、女性たちは長らく世俗から隔離され、読み書きを学ぶ機会を奪われてきたようだ。信心深く、聖書のことばや賛美歌は諳んじることができても、地図上で自らの所在を確認することすらままならない。そんな彼女らが干し草が山積みされた納屋にこもって、男たちの不在中に投票と激論を繰り広げる……。
本作は、あえて時代や場所を曖昧にして普遍化を図る。「事件設定がきわめて特異である」「今の日本社会の現実からかけ離れている」とか、「男である自分には関係ない」「信仰心が薄い/性被害経験がないので想像がつかない」といった理由をつけて、本作を意識の片隅に押しやってしまっては勿体ない。この作品は、世の中が決して「自分の知っているようなもの」ではない、とそっと突きつけてくるのだ。自分の価値観とのズレを意識し再考するきっかけが間違いなくここに在る。
閉じられた空間で進行するスリリングな討論劇というと、真っ先に映画『十二人の怒れる男』が思い浮かぶ。だが、あの陪審員たちはヘンリー・フォンダも含めて全員が「自分たちの正義を信じてやまない」「男たち」だった。本作の討論者はみんな「被害者」で「女性」だ。むしろ「女性を取り巻く、古びない問題を扱う」という点ではジョセフ・ロージーの遺作『スチームバス/女たちの夢』の方がやや近いかもしれない。また全編にわたる静謐な空気感はどこかケリー・ライカート作品を思わせる。さらに賛美歌を歌うシーンでは幾つかのジョン・フォード作品も思い出した。
多くのシーンは納屋の薄暗い室内で進行するが、時折、広大に拡がる畑地と青空、“外の世界”へと繋がるあぜ道が、大きく開け放たれた引き戸から覗く。いま暮らすコミュニティが世界の全てではないこと、“外の世界”への憧れと開放感、また“そこ”も決して安全ではないこと―――それらすべてが一目で見て取れる、きわめて印象的なシーンだ。
登場人物は、討論メンバーはもとより脇役に至るまできっちり描き込まれ、一人ひとりが忘れ難い。なかでも、「男たちを赦す」選択を採るフランシス・マクドーマンドは、出番こそ少ないが圧倒的な存在感を放っている。深い傷痕と皺が刻まれた彼女の無言の表情からは、彼女独りの人生にとどまらない「過去すべての女たちの歴史」が推し量られ、胸張り裂けそうだった。もうひとり、討論の書記を務めるベン・ウィショーは、「純真さと教養をもった良き理解者」「愛する人を見守る者」といった“顔”だけでなく、実はもっと複雑な思いを秘めた人物像を体現していて、最後まで一挙手一投足に目が離せなかった。
もうひとこと。本作の挿入曲として、モンキーズの「デイドリーム・ビリーバー」(‼)と讃美歌320番「主よ 御許に近づかん」の2曲が実に効果的に使われる。特に前者については、劇中で不意に聴こえてくるインパクトとともに、ラストで再度流れる際にその歌詞内容(「青い鳥の羽に隠れる/目覚ましが鳴らない/白馬の騎士/夢見心地の男/学園祭の女王」…)から、現実への深い失望、それでも諦めない未来への希望のような両義性が汲み取れて、強烈に印象に残った。
この映画はレビューを書かないではいられなかったのだ。
今まで観た映画の中で、心の1番奥深くに刺さった映画だった。
女性たちが話し合っているシーンがこの映画の大半を占めるわけだが、一瞬たりとも集中が途切れずずっとスクリーンを凝視して観てしまった。
すごく強い映画だ。
このテーマは、時代や地域、宗教のいかんに関わらず、男と女がいる限りなくならない問題だと思う。
男性という人間の在り方が問われていると感じた。
本作は是非男性に観てほしい。
目を背けたくなる様なシーンなどはなく、あくまで彼女達の2日間の話し合いをメインにした会話劇
その言葉に含まれる彼女達の気持ちを想像して、女として不意に感情が溢れて涙すること数回
これが2010年に起きている事件であることが恐ろしい
赦すか、闘うか、去るか…
未来への対話とその結論は「感動」という言葉ではまとめてはいけない