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6月0日 アイヒマンが処刑された日評論(3)
とくに本作には、今まで知らなかった事を沢山教えてもらいました。
てっきり焼却炉を作る物語かと思っていたので、途中で登場人物の視点が変わるのに混乱…
アイヒマンを通して“様々な立場のユダヤ人”が描かれる映画です。
お恥ずかしながら、イスラエルの背景を全く知らずに見たので、なぜそんな反応になるのかわからない部分が多く…
アフタートークのおかげで、だいぶ整理できたので、私のような方の為に予め知っておいた方が良い情報の一部をご紹介します。
アイヒマンの処刑火葬を巡る群像劇
・焼却炉作り
・アイヒマンの警護
・ポーランドからの移民
イスラエルには迫害から逃げてきた様々なユダヤ人が集まっていて、それぞれ人種も言語も違うそうです。
ヨーロッパ系、アラブ系、ロシア系もいるそうな。
焼却炉を巡る物語に出てくる少年はアラブ系のユダヤ人で、父親はアラビア語しか話せません。
イスラエルはヘブライ語なので、少年が通訳している感じでなんとなく言語が違うことは伝わりましたが…根底にアラブ系に対する差別があるのは分かりませんでした!
てっきり少年が貧しくて問題児だから学校で浮いているのかと思ってましたが、
実は差別があるから貧しくて問題を起こす→負のスパイラルに陥っていることを後から知りました。
弟の名前にも納得。
私が今まで見ていたホロコートを題材にした映画で描かれるのはヨーロッパ系のユダヤ人で、アラブ系のユダヤ人とは言葉も違えば、アイヒマンに対する温度感も全く違う!
学校でハンムラビ法典(や旧約聖書)の言葉を持ち出してアイヒマンの処刑を肯定する教師に向かって少年が放つ言葉にドキッとしました。
本当にその通りなのだけど…逆にそれはアイヒマンの所業を自分たちのことだと思っていないから言える言葉でもある。
実際に犠牲になった人や身内の心情を考えると、そこまで冷静ではいられない。
しかしその後、少年はアイヒマンの焼却炉を作るという歴史に触れたことによって、今まで知りもしなかったアイヒマンに対する特定の感情が生まれます。
アイヒマンを通して、イスラエルのユダヤ人と同じユダヤ人として同調することができたのだと感じました。
では一体、“ユダヤ人”とは何なのか?
映画のなかでも「ユダヤ人とは?人種なのか?宗教なのか?」の問いかけがありますが、考えれば考えるほどわからなくなりました。
定義としてはユダヤ人の母から生まれた子どもがユダヤ人みたいですが、ザックリだなぁ。
そんなザックリな対象をナチスは迫害していたのか。ロジックの破綻が甚しくて怒りしかありません。
そして、アイヒマンが処刑された後の展開も驚きですので、ご注目ください。
埋もれている歴史はまだまだあるでしょう。
もっと歴史は語られるべきだと思いますが、語っても信じてもらえなかったり、すぐには語れない人もいる。
様々な圧力の呪縛を抱えて実体験を証言するには時間が必要になるのもわかる。
でも、語ることで救われることもあるから、生きてらっしゃるうちにその時が来るのを祈るしかない。
歴史に触れた少年は、そのこと自体が自分が“ユダヤ人”である誇りとなったのでしょう。
余談:証言について、小学生のころ体育館で観た『対馬丸 さようなら沖縄』を思い出しました。言えないことの苦しさはどれほどだったか。
一般人の視点からアイヒマンの処刑を描いた映画です
死刑が執行されたイスラエルでは火葬が禁止されているという事実に驚く。急遽焼却炉を作らなければならなくなった町工場社長や偶然関わる事となったリビア系移民のユダヤ人少年、さらにアイヒマンを監視する護衛、彼らも間接的だがホロコーストの被害者であるといえる。
テーマ的にも地味な上にドラマチックに盛り上げる見せ場もないので、淡々とストーリーが進行してしまうのが辛いあたり。でも、ユダヤ人とアラブ人との微妙な関係や、ナチが滅んでも安住の地を求めて彷徨い続けるユダヤ人の辛い運命を垣間見れるという点は興をそそる。