言葉が失われた荒廃した世界で生きる人間たちの姿を全編モノクロ、セリフなしで描いた異色ドラマ。言葉のない世界で原始的な廃墟のような建物で自給自足の生活を送る一人の女。狩猟で蓄えた食料は行商人と物々交換し、女の体と食料を目当てに来た山賊に襲われることもあるが、女はたくましく日々を生きている。ある日、女の仕掛けた罠に1人の若い男がかかる。女は男を家に連れて行くと、男はなぜか女になついていく。女も情が移ったのか、2人は共同で生活を開始する。そんな日常が続く中で、徐々に人間のさまざまな欲望が顔を見せていく。主人公の女を「菊とギロチン」「岬の兄弟」の和田光沙、若い男を「かかってこいよ世界」の飛葉大樹が演じ、仁科貴、寺田農が脇を固める。監督は「いつかのふたり」の長尾元。
映画(窒息)評論(6)
そんな観客の不安な想いを監督さんは楽しむように映画は始まり、最後は予想外のエンディングを迎える。
モノクロ作品は観るものに想像を掻き立たせ、観るものが自身でクレパスで色付け出来るので面白い。
他人を思いやる人間もいるが、最終的には自己中心な生き物。
登場人物は少なく小さな世界で、そんな冷徹とも取れるメッセージが鳥や虫の声と共に囁かれる。
和田光沙さん演じる〝女〟の一挙一動はワイルドだが、混じり気のない素そのものである。
そのワイルドで時折見せる微笑みに観る者は魅了される。