「ソウ」シリーズの脚本家リー・ワネルが監督・脚本を手がけ、透明人間の恐怖をサスペンスフルに描いたサイコスリラー。富豪の天才科学者エイドリアンに束縛される生活を送るセシリアは、ある夜、計画的に脱出を図る。悲しみに暮れるエイドリアンは手首を切って自殺し、莫大な財産の一部を彼女に残す。しかし、セシリアは彼の死を疑っていた。やがて彼女の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、命まで脅かされるように。見えない何かに襲われていることを証明しようとするセシリアだったが……。主演は、テレビドラマ「ハンドメイズ・テイル
侍女の物語」のエリザベス・モス。
透明人間評論(20)
まず序盤から秀逸。
押し寄せる波で題名を浮かび上がらせ、観客を一気に不安にさせて世界へ引き込む。
そして本編が始まったら最後。
息抜きも出来ない疾走感溢れるテンポと見えない恐怖という題材のせいで何の変哲もない風景全てに神経を使わなければいけない。そんな神経を澄ませた状態でホラーをやられると心臓に悪いくらいビックリする!初めて透明人間の姿を確認できるペンキのシーンはマジでビビった!心臓が痛くなるくらいに。
もう演出の圧倒的勝利です!
物語的には素人が作ったらただのB級感凄いシラケた映画になりかねないが、聞くだけでゾッとする音楽とスタイリッシュで恐怖心煽るカメラワーク。何よりも透明人間をいると思わせる演出(足跡だったり息だったり)がものすごくハイレベルな仕上がりで超一級品の豪華なホラーになっている。
それに透明人間についての謎が提示されていて、サスペンス要素も多い。
最近、いや今まで観たホラー映画の中でもトップクラスの怖さだった。
近くの映画館では上映終了していて、DVD待つか〜って思ってたけど、招待券あるし新作観てないからな〜って思っていつもと違う映画館に行った。結果、本当に映画館で観て良かった!DVDなんかで観てたら全然ビックリしないし、あのなんとも言えない独特の空気感は無かったと思うし。
改めて映画館の素晴らしいさを感じた。
ちょいネタバレ注意
↓
透明人間のスーツが集合体恐怖症の自分にとってすごく気持ち悪くて、すごく怖かった!
劇場公開が終了間際だったので、滑り込みで観賞。
米ユニバーサル映画の「ダーク・ユニバース」構想を仕切り直した第一段。
一旦プレスリリースされた、ジョニー・デップ版の透明人間も観たかった気はするが、お蔵入り。
そもそも今更感の強かったユニバーサル怪奇映画のリボーン企画。個々独立の路線に変更し、「ソウ」シリーズの脚本家であるリー・ワネルを監督・脚本に起用した効果はあったと思う。
発想が斬新で、雰囲気作りの演出も上手い。先が読めないストーリー展開が楽しめた。
科学者の狂気を単に描くのではなく、夫から逃げ出した主人公が、夫が開発したであろう透明人間ストーカーによって精神的に追いつめられていくという、捻りがきいた物語。
映画は、この物語の根幹を形成しているはずの3つのポイントを見せていない。①透明人間の研究開発、②主人公が夫から逃走する原因、③夫兄弟の確執。
だから、結末の意味は観客の解釈に任せられている。
映画の序盤で、意味深にカメラが誰もいない室内をパンして見せる場面が何回かある。透明人間の映画であることは周知のことなので、観客はそこに透明人間がいるのではないかとドキドキする。
主人公が友人宅に身を寄せてからは、夫が透明人間なのだろうと観客は想像するのだが、夫が眠らされていた冒頭の脱出シーンでも同じような演出があった。
つまり、夫以外の透明人間があの段階からいたことになり、それは夫の兄だということになる。
夫の兄は弟の言いなりだったのか、逆に夫が兄に支配されていたのか…
後者だと考えると、結末はより恐ろしいものになる。夫の証言と警察の見立てが正しかったことになり、主人公の行動が確信だったのか誤解だったのかに論点は移る。
主人公は、どこかの時点で夫兄弟に主従逆転が起きたことを確信したのではないだろうか。
夫のことを恐れ恨んでいたことは事実だから、兄に拉致監禁されて弱っていると見た主人公は夫への復習計画を考えたのではないか。そして、最大の目的は遺産相続に違いない。
計画完遂後の主人公の表情が、それを物語っていると思う。
辻褄を合わせようとすると、どう解釈しても矛盾はあるので理詰めは難しいが、色々と想像する楽しさを残してくれる映画だった。
意外な展開で観る側を惹き付ける。先を予想させないための布石が矛盾を生むあたりは、ダリオ・アルジェンドの全盛期を彷彿させる。
主演女優は、配信ドラマ「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」のエリザベス・モスだった。観るまで知らなかった。あのドラマも異様な空気感があった。
精神の異常を疑われ始めてからの彼女の演技は、独壇場と言って良い。むしろ彼女の方が怖いくらいだ。
『チェンジリング』のアンジェリーナ・ジョリーを思い出した。
まず怖いのは音。
音が鳴るたび震え上がった。
恐ろしい空間、そこに何かがいてこっちを観ている。
恐ろしいカメラワーク。
明らかに見えない何かがこちらを覗いてる。
そして、分からない何かが襲って来るようだった。
恐ろしい闇。闇には何かが潜んでいる。
恐ろしい音楽。エンディングまで怖かった。
素晴らしい脚本。
単に透明人間を超常現象のように扱う発想だけでなく、
後半の主人公が攻めに転じてからも面白かった。
主人公が精神を病んだ人のように見せるのは、
演技も相まって唸った。
クローゼットの伏線をエンディングで回収するところも、
ここまで主人公は考えてたのか!
怒った女性は怖い!と震え上がった。
最初から最後まで興奮しっぱなし、
とても怖くて最高でした。
犬を助けようとして警報を鳴らし、大事な薬を落とし、察しが悪い妹。
このオープニングでイライラして入り込めなかったの。
それで『彼は死んだ』って妹に告げられた後で、主人公宛に遺産相続の通知が届くんだよね。そこの住所に主人公がいるって知ってる人はいないんだから、おかしいと思えよっていう。一言触れるだけでノコノコ出てくからね。
遺産相続の場では察しが悪かった妹が俄然姉の味方で話すんだけど、オープニングでは、なんであんなに察し悪かったの? 朝の四時に迎えに来いって言われたら緊急事態だって解るよね。
そんなこんなで「なんだこの映画」と思って、なかなか入り込めなかったのね。
でも主人公が孤立してって、一人で戦うんだってなったあたりで、なんか入り込めてきた。
病院の戦いのシーンでは「チャンスはここしかない、逃すな」と思って応援したな。
ラストは「ここで心理戦要素入れてくるのか。すごい」とちょっと思ってると違う展開きて、「なるほど。このアイデアか」と唸ったりしたよ。
でもね、この作品、アイデアに惚れすぎてシナリオに無理出てるし、そのせいもあって人物描写が弱いの。
妹のキャラはブレブレなのね。局面毎に都合よく描かれてんの。主人公もさ、透明人間にやられて「きゃー」「ひゃー」って言ってるのに、病院のシーンでは「ワンダーウーマンか!?」ばりのヒロインさで闘うよね。
スーツを見つけたときも持ち帰ればいいのに、家に置いてきて「なんで?」って思うけど、ラストシーンで使いたいから、家に置いとく必要があるんだよね。
スーツ隠しといた場所も相手にばれないでしょ。あんなに隙のない相手が、家の中の隠し場所を見逃すわけないんだよ。
オープニングでのれなかったせいで、脚本の穴が目に付いちゃったけど、たぶんそこがなかったら、展開のアイデアすごいし「超面白い!」と思いながら観たろうな。