瞳をとじて
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勝手にしやがれ!! 英雄計画評論(1)
気合が入ってることがわかるのが、途中、6分40秒の長回しがあることだ!
正義感に目覚めた男・青柳。その“正義”という言葉も虚しく可笑しく描いてあるわけだが、とりあえず雨宮という男に絞り、路に痰を吐いただの、ゴミの分別がおかしいなどと些細なことばかり。実際に会ってみた青柳、雄次、耕作だったが、とても暴力的な男とは思えない、“いいおっさん”だったのだ。しかし、市民運動を組織して、雨宮を追い出そうとする青柳を制して、雄次が単独乗りこんでみると、彼はヤクザなんかじゃなく単にヤクザに憧れている畳屋のおっさんだったのだ。そしてついに青柳が拳銃で足を撃たれるという事件が起こったが、実は彼の自作自演。正義の実行には汚いことも必要だという本末転倒な思想の男になっていた・・・。雨宮は自分で出て行ったが、今度は雄次が銃撃の罪を着せられ警察に追われることになった。
そして一年後、富士見町は町出身の衆議院議員(藤田敏八)のおかげで、町浄化法案のモデル地区となり、マンションも建ち並び、ホームレスを追い出そうとする行政と共存を認めようとするグループが対立することになった。そして議員秘書を務める青柳が先頭となり、町内会の集会所さえマンション立地のため取り壊そうとしていたのだ。そんな近未来の政治的SFの展開に驚かされるが、逃亡中の雄次が雨宮とともに帰ってきた。新宿地下街でホームレス闘争のリーダーとなっていた雄次。ここでも積極的に青柳と対峙する。ヒロインでもある青柳の妹・玲子(黒谷)の頼みもあって、元の青柳に戻してほしいと頼まれる。そこで青柳を拉致し、彼の弱みをテープに録音するが、妹を人質にとってテープと銃を取り戻し、逆に雄次が追い詰められることになった・・・そして、警察の包囲網の中、煙幕と銃声が響く中、突き進む雄次と耕作であった・・・『明日に向って撃て』的な結末だ!
黒沢清もこんな社会風刺的な作品を撮れるのだと改めて感心した。とくに青柳のキャラというのはファシズムが台頭する雰囲気によく似ている。さすがにターゲットが暴力団じゃなくて“ゴミの分別”という茶化したところがオブラートに包んだようで面白い。現代においては、そうしたターゲットが中国や北朝鮮であり、北の脅威を声高に叫ぶほどファシストとして映ってしまう。