「忘れじの面影」のマックス・オフュルスが一九五三年に監督したコステューム情緒ドラマで、「巴里の気まぐれ娘」のルイズ・ド・ヴィルモランの小説から「呪われた抱擁」のマルセル・アシャール、マックス・オフュルス、アネット・ワドマン(「レストラパアド街」)の三人が脚色した。台詞はアシャアル。「ボルジア家の毒薬」のクリスチャン・マトラが撮影を担当、音楽は「アンリエットの巴里祭」のジョルジュ・ヴァン・パリス。「凱旋門」のシャルル・ボワイエ、「愛すべき御婦人たち」のダニエル・ダリュー、「懐かしの日々」のヴィットリオ・デ・シーカ、ジャン・ドビュクールらが出演する。
たそがれの女心評論(2)
制作された当時は、作品の長さを、この100分間程度に収め切ることが望ましいとされていたのでしょうか、慌ただしいテンポに慣れるまで、最初は、少しだけしんどかったのですが・・・・・、
演劇表現のジャンルを舞台作品から映画へと膨らませることになった、1950年代当時の精鋭を極めた技法や設定が、たくさん詰め込まれていた作品でした。
また、人物よりもモノを主人公とする進行の黙示、謎は謎として、変わらないものは変わらないものとしてそのまま受けとめる、あるいは、無理をしてまでハッピー・エンドにしない e.t.c. ・・・・・、
最近の制作作品でも感じることの多い、フランス映画に特有のエッセンスが、たっぷりと詰まった作品でした。
美しく社交界でも一際目をひく将軍の妻が、
夫からの結婚記念日の贈り物の耳飾りを、夫に内緒でお金の工面のため宝石商に売った事から始まる嘘の輪廻。
大人の男女の大人の嘘と愛。
端々に散りばめられた洒落た台詞。
フランス映画を楽しんだと実感する映画。