「カメラを止めるな!」の上田慎一郎が脚本、「カメ止め」で撮影監督を務めた曽根剛がメガホンをとったヒューマンドラマ。「笑い」がもたらす癒しの力によって、人々が困難や葛藤を乗り越えていく姿を描く。東日本大震災のドキュメンタリーを作るために来日したアメリカ人映像ディレクターのスティーブは、被災地を訪れた際に見かけた演劇の舞台をきっかけにコメディ映画を作ることを思いつくが、作品製作に暗雲が立ち込めてしまう。しかし、彼には映画を撮らないといけないある理由があった。一方、3・11で息子を亡くし、ロサンゼルスに移り住んだ日本人シンガーの麗子は、歌のせいで息子を失ったという罪悪感にさいなまれていた。シンガーとして活動することや日本に残してきた夫と向き合えない年月を過ごしていた彼女は、夫からの手紙の中にあるものを見つける。スティーブ役を「コンフィデンスマン JP」の執事役で知られるマイケル・キダ、麗子役をラッパーのAwichがそれぞれ演じる。
永遠の1分。評論(1)
正直ツッコミどころは多い。とにかく物語が良くも悪くも性急に進んでいくため、「世界仰天ニュース」の再現VTRを観ている感覚に陥ってしまう。主人公スティーブが3.11のコメディ映画制作を決意する真意や、震災が原因で別離した夫婦のエピソードそれぞれも弱い。何よりも映画内映画の面白さが伝わってこなかったのが辛いところ。
でも繰り返すが、「不謹慎、自粛」という固定観念に、“娯楽”という一石を投じる姿勢を評価したい。楽しむ事だって人間には生きていく糧となるのだから。