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野火 プロット 日本 07月25日 2015 台灣上映
鍵(1959) プロット 日本 06月23日 1959 台灣上映
ワーロック(1959) プロット アメリカ 07月01日 1959 台灣上映
風花(1959) プロット 日本 01月03日 1959 台灣上映
細雪(1959) プロット 日本 01月14日 1959 台灣上映
氾濫(1959) プロット 日本 05月13日 1959 台灣上映
野火(1959)評論(9)
そういう極限の中でどれだけ理性を保っていられるか、という内容。
絵本 地獄――千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵
という大判の絵本があります
そのお寺に所蔵されている十六幅の絵巻をもとに構成したものだそうです
1784年(天明四年)、江戸の絵師によって描かれたものとのこと
40年程前に発行され、一時期ブームにもなりロングセラーを続けているそうです
今もAmazonでも買えます
まさにその絵本の中の地獄の光景が展開されます
というより、この絵本を映画化したものだったのではと思ってしまう程です
その中にこのような一節があります
三途の川をわたり、閻魔大王の前に出て、針地獄の宣告を受ける五平。
「こんどだけは生きかえらせてやろう。だが、おこないをあらためなければ、このつぎこそ地獄だぞ。地獄がどんなところか、とっくりとみせてやろう。
もとの世にかえって、みなのものにはなしてやるがよい……」
この閻魔大王の言葉が本作のテーマです
戦争は華々しい栄光の物語もあります
一方、勝敗は裏表です
負けた時の悲惨、敗者の無惨、地獄絵図
これもまた戦争の一面です
その両方を観て、私達は戦争という恐ろしい現実を知らねばなりません
なぜなら国家や民族の自立と独立の為にはやらざるを得ない事態もあり得るからです
より一層の地獄絵図を子々孫々にまで残すことになるからです
希望的観測、教条的イデオロギー、夢想的空想的な平和主義・・・
そんなものが戦争を引き起こすのです
私達は徹底的にリアリストで在るべきなのです
究極の反戦映画であるのは間違いないでしょう
しかし本作はそこをさらに超えて、人間とは何か、どう生きるべきかにまで踏み込んでいます
傑作ですがあまりにも重いです
太平洋の島々での日本兵の戦死原因の大半は、戦闘で撃たれたり爆撃されたりしたのではなく飢餓と病気だという。補給線を軽視して無理な戦闘計画を立案した結果、戦う前から負けは決まっていたようなものだった。
そして戦線に駆り出された兵士は、その容赦ない残酷な現実と直面する。その中で生き残るということは、今まで生きてきた常識と世界観が崩落するということである。敵と戦う前に、まず飢えと病気と闘わなければ生きられない。そのために出来ることはするが、それは過去の生活と決別し異常な世界に生きることである。
このような話は本ではよく読んだし、『ゆきゆきて、神軍』でも同様の話が出てきた。兵士の経験した壮絶な日常を改めて映像化して見せられ、それが心に刺さる。素晴らしい主題をもった内容の作品だった。
残念ながら古い作品であり、その古さゆえに映像と演出には不満が残る。現在の技術と演出で再映画化すれば、随分と出来が良くなるのではないか。幸いなことに昨年に再映画化されているようなので、機会を見つけて観てみたい。