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非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎評論(2)
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【ヘンリー・ダーガー】1892〜1973
親類、友人もなく、
雑役夫として働いていた病院と
教会のミサを行き来するだけの
貧しい生活の中で
15,000ページを超える小説と
数百枚の挿絵を書き続けていた
.
とある
.
一番興味を引かれたのは
生前の彼を知る人間はほとんどいなく
彼の名前の発音すら、
定かではないというところだ
誰にも意識されない彼の存在
誰にも呼ばれない彼の名前
しかし彼は生涯、
自らの妄想を描き続けた
一人ぼっちのせまい部屋で
安い紙と安い絵具で
その辺の雑誌の切り抜きを絵の見本にして
.
彼にとってはすべてが妄想の元であり
それはつまり、
彼が幸せだったということなのだろう
貧乏なら不幸とか
1人ぼっちなら孤独とか
存在に意味がないとか
そんなことではなく…
.
彼は自分を幸せにする術を知っていた
という事なのだろう
.
動画に残っていない彼の姿を、彼の作品の考察と隣人たちのインタビューから浮かび上がらせています。
ダーガーは『非現実の王国で』で、誰のためでもなく、ただ自分のために自分を表現しました。他人に売らない、見せない、ただ「芸術」です。
私も絵を描くことが結構好きですが、創作活動をするときには他人からの評価を無意識的にも必ず意識してしまうものです。
それはもちろん悪いことではありませんが、ダーガーのように他者からの評価や励ましを得ずとも、凄まじい芸術は生まれ得るのだと知り、感銘を受けました。
他人と共有できない、しない価値というのがあってもいいのではないでしょうか。
私たちはいつも他人からの承認を求めています。SNSでの自己表現が流行していることは分かり易い例でしょう。しかし他者に承認されない自己表現に満足してもいいのです。
他人に可哀そうがられても、ダーガーのように、自分が幸せと感じた生き方を信じることもできる。
幸福のあり方の多様さに気付かされました。